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我が剣は愛する者の為に
子を愛する親
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らしながら睨み合う事数秒。
男はゆっくりと立ち上がり、壁に立てかけている斧を掴み肩で背負う。
巨大な身体では狭い入口を屈んで家を出て行く。
男の強さは統領は知っている。
あれに敵う奴等いないと、そう思っている。
そんな確かな自信を持った統領の傍にいる娘は家を出て行く父親の後ろ姿をじっと見つめる。
母親は娘が生まれた時に病気にかかりこの世を去っている。
それから色んな事情があり、この村に移住する事になった。
一度、興味本位で父親に聞いた。
母親は何故父親を好きになったのか?
いつも厳しい面もちをしている父親がその時だけ照れた。
顔を赤くしながらも娘の質問に答えた。
自分の後ろ姿が男らしく勇ましいかったからだそうだ。
最初は照れていた父親だが、母親との思い出話を懐かしむような顔で語る。
今、家を出て行った父親の後ろ姿には母親が好きになった後ろ姿の名残りが一切なかった。





後ろで子供達を避難しているのを邪魔しようと賊達は追いかける。
あれは大事な人質だ。
あれがなければ村の人々は自分達の思い通りに動いてくれない。
しかし、一人の男が賊達の進行を邪魔をする。
この時代にはない剣を振るい賊達を斬り裂く。
縁はある一定のラインを保ちつつ賊達の進撃を単独で食い止めていた。
賊程度の腕なら何人かかってきても問題ではない。
むしろ今は後方に賊を向かわせない事に意味がある。
一応、星や太史慈がいるとはいえ子供達を守りながらでは厳しい戦いになる。
十人くらい賊を殺した辺りで賊が無闇に縁を攻撃するのをやめる。
賊の総数はおよそ五十といったところ。
残りは四十人。

(いきなり攻撃をやめた?)

構えのない構えをとりながら縁は警戒する。
賊の中の一人が他の賊に指示を出した。

「半分は回り込んで餓鬼共を捕まえろ。
 残り半分はこいつの足止めだ。」

「ちっ!」

思っていたよりこの賊達は頭が回った。
幾ら単独で賊達を防げる戦力があったとしても、この勝負は賊を殲滅する事ではない。
人質である子供達を無事に逃がすのが目的だ。
だから、縁は向かってくる賊を倒すだけでこちらから攻める事はしなかった。
攻めてしまえば他の賊が回り込み、子供達を取り戻しに行く。
さらに単独である以上、さっきの賊の言った通り人数を半分にされ回り込まれても対応ができない。
縁は舌打ちをして、どうするかを考える。

(俺も後ろに下がった方が良いか。
 それなら子供達が奪われる可能性は低くなる。)

そうと決まれば急いで下がろうとした時だった。
賊達の後方に巨大な男がこちらに向かって歩いている。
三白眼に灰色の髪をオールバックして顎には髭を生やした二メートル三十センチの男。
肩には巨大な斧を乗せている
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