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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百四十六話 ギルベルト・ファルマー
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せん。分かりました、心から歓迎します」
ヴァレンシュタイン元帥は穏やかに微笑むと右手を出してきた。私も右手を出し握手する。柔らかく、温かい右手だった。
帝国暦 487年10月17日 オーディン ブラウンシュバイク公邸 アントン・フェルナー
勅令による改革か、嫌な所を突いてくる。どうやら暴発を避ける事は出来ないかもしれない。だとすれば……。
「フェルナー閣下、FTL(超光速通信)が入っています」
いつの間にかブラウンシュバイク公爵家の使用人が傍にいた。近づくのも気付かないほど考え込んでいたらしい。俺は使用人の言葉に頷くと公爵家にある自室に戻りFTLを受信した。
「久しいな、フェルナー」
「フレーゲル男爵……」
「その名は止せ、今はフェザーン商人、ギルベルト・ファルマーだ」
ギルベルト・ファルマーは薄く笑いを浮かべながら私をたしなめた。かつてフレーゲル男爵と名乗った頃とはまるで印象が違う。髪形を七三で分けている事もあるが、以前有った表情の険しさが消え、落ち着いた雰囲気がスクリーンからでも感じられる。
「もっと早く連絡が有ると思っていましたよ、ヘル・ファルマー」
「色々と調べる事があってな、遅くなった。伯父上、いや、ブラウンシュバイク公は如何かな」
こちらの嫌味に動じる事も無く、ギルベルト・ファルマーは公爵の様子を尋ねた。
「お客様のお相手をしておいでです」
「まあ、そうだろうな、で、相手は?」
「ヒルデスハイム伯、ホージンガー男爵です。他にも入れ替わり立ち代り公爵閣下の元にお客様がお出でです」
「ヒルデスハイム伯、ホージンガー男爵か……ブラウンシュバイク公も大変だな、あしらうのが」
前半は何処か懐旧の色がある声だった。だがその後の声には苦い響きがある。こちらがどういう状態なのか、想像がついたのだろう。
「確かに梃子摺っておいでです。ところで今回の勅令、フェザーンではどのように取られていますか? それを調べていたのでしょう、ヘル・ファルマー」
ギルベルト・ファルマーは面白くもなさそうに鼻を鳴らすと話し始めた。
「大体において好意的に取られている。貴族というものは傲慢で鼻持ちならないと考えているからな。だがそれだけではなく、経済面でも改革に期待している人間が多いようだ」
「……期待というと」
「まず、間接税の引き下げだな。税が引き下げられれば当然だが購買意欲がわく、次に内乱によって貴族が滅びれば、帝国が一つの経済圏になる。経済効率も上がり、その波及効果はかなりのものだろうと皆考えている」
「なるほど……」
銀河帝国は君主制専制国家だが、その内部は貴族達による地方王国の連合体といった趣もある。大貴族ともなれば星系を有し、自治権を有している。関税までも自由に設
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