第二部 WONDERING DESTINY
CHAPTER#9
DARK BLUE MOON 〜Sapphired Moment〜
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【1】
少女はふと、眼を醒ました。
真夜中の、プラチナの光の中。
夜風に揺れるベルベッド風のカーテンから外光が室内に漏れ、
ソレが部屋に置かれた調度品に反照しモザイクのような装飾を形造っている。
「……」
無言のままシルクのベッドのから降り、
就寝時の下着姿のまま夜風の靡く方向へと音もなく歩いていく。
躰の節々に鈍痛が在った。
歩を進めるごとに筋繊維と関節が軋む。
しかしそんな痛みなど一眉だにせず少女は進む。
通常なら、『こんな程度』 では済まされない。
まだフレイムヘイズに成り立てで 『本当の戦闘』 に不慣れな頃、
最後の奥の手として “アノ方法” をアラストールから伝授された時、
ソノ翌日は全身を劈く苦悶と、眩暈と吐き気で起きあがるコトすらも出来なかった程だ。
ソレだけで、アラストールが如何に己を気遣い躰を丁重に扱ってくれたのかが解る。
分厚いガラステーブルの上で佇むペンダントは何も言わなかったけれど。
やがて少女の視界に映る、世界都市香港の夜景。
ありとあらゆる種類の宝石を砕き、ソレを闇の空間へ幾何学的に散りばめたかのような、
極彩色のマスカレード。
しかしその世界に冠たる美色の饗宴も、今の少女の瞳には映らない。
「何、やってるの……? 私は……」
ギラギラと輝く街のキラメキにその白磁のような白い肌を照らされながら、
少女はポソリとそう呟く。 夜風が髪を浚い、キャミソールの裾が微かにはためいた。
「一体、どうしたいの? どうして?」
まるで自らを断罪するように少女は深い夜の中、自答を繰り返す。
「こんなコトをする為に、こんなコトがしたくて、私はここにいるんじゃない……!」
呻くように絞り出した少女の悔恨は、ただ夜風に紛れるのみ。
「……」
テーブルの上のアラストールは黙として語らず、ただ厳かに瞳を閉じる。
脳裡に浮かぶ “彼女” が、ただ慈しむように一度だけ自分に向かって頷いた。
【2】
ホテルの朝は、意外なほどの喧噪で包まれていた。
SPW財団系列の中でも指折りの宿泊施設の筈だが、
それを常用的に利用出来る者はいる所にはいるもので
民族も人種も多岐に渡る人々がフロアを行き交っている。
ある者は早足で携 帯 電 話を片手に忙しくなく喋りながら。
またある者はロビーに備え付けられた豪奢なソファーで談笑しながら。
そのような中ホテル十二階の一室から一人で出てきた、
小柄で髪の長い制服姿の少女の姿は一際異彩を放つものではあったが、
無論彼女はそんなコト等気にも止めず朝食の為指定された場所を目指す。
周囲の無分別な視線に晒されながらエレベーターを降り一階の、
その左側が全面
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