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STARDUST唐eLAMEHAZE
第二部 WONDERING DESTINY
CHAPTER#9
DARK BLUE MOON 〜Sapphired Moment〜
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応シャナにも声をかけてみたのだが、
既に何処かへ出掛けたらしく部屋には誰もいなかった。
 香港には旅行好きな両親と共に子供の頃から何度も来た事があるので、
花京院は熟練のツアーコンダクターさながらの流暢な口調で
その風土や名所を承太郎に説明した。
 彼は興味深そうに頷きながら吹き抜ける海風に髪を揺らし、
遠間に拡がる青い空間を仰ぎ見る。海が好きなんだな、と花京院は
潮の香りを共に感じながらそう想う。
 特徴的な学生服に身を包んだ、アジアの一流映画スター顔負けの美男子二人が
放埒に香港の街を練り歩く様子に、周囲は蜂箱をひっくり返したように騒然となったが
承太郎は言葉が解らず花京院は気にしない。
 途中海沿いの屋台で本場の中華麺を啜り、
次の場所へ移動しようとした矢先に、承太郎が煙草が切れたと自分に言った。
「つき合おうかい? 君、広東語解らないだろう?」
「いい、指差して金だしゃ通じるだろ。ダメでも自販機がある」
 そう言って彼は雑踏の中へと消えていく。
 残された花京院は白いガードレールに腰を預けて細い腕を組み、
彼の帰還を待つコトとなった。
(……)
 どんなものであれ、『旅』 は良い。
 誰も自分を知らない異国の地に在る時、
ほんの一時でも 『スタンド使い』 であるコトを忘れるコトが出来るから。
 そしてそれぞれの国に在る長い歴史を持つ建造物や遺跡、文化に触れる時、
その中に宿る悠久の人々の営みを感じた時、
自分の抱える悩みなど取るに足らないモノに想えてくるから。
 流れる人の群は、そのどこか人間離れした神秘的な雰囲気で街路に佇む
中性的な美男子に想わず眼を止めるが、
やがて後ろ髪を引かれるようにし足早に去っていく。
 彼にはみかけの美しさ以上にどこか儚げな、
『見つけてはいけないような』 繊細さが在ったからだ。
 しかし。
 そんな文芸的な暗黙の不文律など端から度外視して直進してくる、
青年の醸し出す雰囲気とは完全に対極に位置する途轍もない存在感の美女が、
やがて傲然と彼の前に立つ。
「?」
 瞳を閉じて前髪に靡く海風を感じ、異国の情緒に浸っていた中性の美男子は、
突如己の超至近距離に何の脈絡もなく出現した、
強烈な雰囲気とソレに絡みつくようなパヒュームの魔香に想わず眼を開く。
「……」
 その琥珀色の瞳にまず入ったのは、極上のアメジストのような深い菫色の瞳。
 次いで風に流れる、嫋やかな栗色の髪。
 厚くなく薄過ぎもせず、絶妙の調整で(よそお) われたきめ細やかな肌が
自分の前にあり、熟する寸前のブラック・ベリーのようなルージュで
彩られた口唇がその下にあった。
「……」
 閉じた瞳を開いたら、中世彫刻の黄金比を象ったような
絶世の美女がそこにいたという、
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