第二部 WONDERING DESTINY
CHAPTER#9
DARK BLUE MOON 〜Sapphired Moment〜
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》な声が上がった。
ソレと同時に、不可思議な現象が起こった。
『本』 を包むブックホルダーの、まるで日記に付いている鍵のような留め具が
ひとりでに外れ、強風でもないのにバラバラとページが独りでに捲れ始める。
年代ものの羊皮紙らしいそのページは、素人には解読不能の古めかしい文字で
ビッシリと埋め尽くされていた。
嬌艶な美女の右隣二席分を占拠して捲れ続けていた本は、
やがて一つの付箋を挟んだページでピタリと立ち止まる。
「んで、“選定” の括りは?」
問われて美女は双眸を閉じたまま、一時の逡巡もなくサラリと答える。
「若くて、私を 『美人』 だと認識した人間全て」
「かァ〜〜〜〜〜ッ! 自分で言うかね? 普通」
嘲るように答えつつも、本は古文字の一部に群青色の光を点して浮かび上がらせる。
ソレは存在の力を繰ってこの世ならざる事象を起こす “自在式” の一つ。
「お黙りなさい。余計なタイムロスをなくすにはコレが一番合理的なのよ」
そう言って美女は腰にかかるストレート・ポニーの内側を慣れた手つきで掻きあげる。
その動作と同時に、ミステリアスな動物性香料と数種のハーブが絶妙の配合で
ブレンドされたパヒュームのミドルノートが海風に乗って周囲に靡く。
己の美貌を自他共に認めており、しかもその事実に練熟していなければ
決して出すコトの出来ない、魔性の芳香
「あ〜あ〜あ〜、そーゆーコトにしといてやるよ」
悪態を付きながらもその事実は一心同体である自分が他の誰よりも知っている為、
マルコシアスはそれ以上は突っかからず “選定” を続ける。
「ン〜、とっとっとぉ〜。ったくその “選定” だと毎度毎度数が多すぎて仕方ねーぜ。
大体若ぇ人間の男なんざぁ、頼まれなくても年がら年中発情してンだから
ウチの魅惑の酒 盃の肢体見りゃあ
ソッコーで犬ッコロみてぇにアレぶっグゲェオア!!」
画板のようなゴツイ本の表紙に、キツく固められた右の鉄槌が
高速で撃ち落とされた。
「余、計、な、御託はいいからさっさとなさい。
こんな所でマゴマゴしてるわけにはいかないの」
そう言って美女は瞳を閉じたまま、固めた拳横でグリグリと羊皮紙の表面を抉じる。
「へぇへぇ、オレが悪ぅござんしたよ。
取りあえず人の良さそうな、騙しやすそうなヤツを選びゃあいーんだな?」
「……取りあえずソレでいいわ。早くして」
若干語弊があったが、時間を節約したい美女は流して続きを促した。
「フゥ〜、まぁコレとコレとコレとぉ、
おっ、コイツもカモりやすそうな顔してやがるぜ、
ヒャッヒャッヒャッ♪♪♪」
邪で心底楽しそうな声が、分厚い 『本』 の隙間から当たり前のように漏れる。
傍から見れば完全
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