第二部 WONDERING DESTINY
CHAPTER#9
DARK BLUE MOON 〜Sapphired Moment〜
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に沈黙していた花京院が、
野菜と白身魚のムースを食べ終えた口元をナプキンで上品に拭いながら言う。
「昨日のあの 『男』 J・P・ポルナレフと言いましたか。
彼の処遇は一体どうなりました?」
「……!」
花京院のその言葉に、共に全霊を尽くし互いにその存在を認めあった
アラストールが反応する。
「うむ。取りあえずはSPW財団系列の医療機関にその身を安置しとるよ。
何しろ全身の至る箇所が火傷だらけで放っておけば命にかかわる重傷だったからな。
今朝方入ってきた情報によると、昨日の深夜には意識を取り戻して
もう喋れる程度には回復したそうだ。
流石にアレだけの 『スタンド能力者』 その自然治癒力も
一流といった所かの」
「そうですか。よかった」
花京院はソレだけ確認したかったのか、安堵した表情でカップを口に運んだ。
「くれぐれもアラストールによろしくと頻りに感謝の意を示しておったそうじゃ。
邪悪な意志はもう微塵も感じられんらしい。
ただ、病室を訪れる女性の看護師や医師達を、誰かれ構わず口説き落とそうとするので
その点は困り者らしいがな」
ジョセフは苦笑しながらそう言い、魚貝類のグラタンを口に運ぶ。
(むう、アノ者。そのような嗜好の持ち主だったのか……)
散るその間際まで高潔だった彼の姿からは、
俄に想像もつかないのでアラストールはなんとなく面白くない表情のまま心中で呟く。
その上で。
「……ごちそうさま」
いつのまにか朝食を食べ終えていた少女が静かに呟く。
そして周囲を一眉だにしないまま席を立つ。
「あ、おい、シャナ」
重苦しい雰囲気のまま自分達を避けるようにその場を離れようとする少女を、
ジョセフは反射的に呼び止める。
しかしシャナは、ほんの一瞬だけ立ち止まるが足早にすぐその場を立ち去ろうとする。
その刹那だった。
「よぉ?」
「……ッ!」
振り向かず背中越しにかけられた青年の声に、
少女は雷にでも撃たれたかのように背筋を伸ばしその場に停止する。
「……」
そして首だけで振り向いた少女の瞳。
ソレは。
何かを求めるような、そして縋るような、
そしてそのスベテを拒絶するかのような矛盾した表情。
指先で微かに触れただけで、容易く崩れ落ちてしまいそうな、余りにも儚い印象。
その彼女の様子に気づいているのかいないのか、
無頼の貴公子はシャナに背を向けたまま事務的に告げる。
「ケータイの電源、入れとけよ。人喰いのバケモンが現れたらすぐに報せろ」
承太郎のその言葉に少女は一度鋭く彼の背中を睨め付けると、
「おまえの助けなんか……必要ない……一人で出来る……」
押し殺した声で、震える口唇で、苦悶を吐き出すようにそう返す。
「どうかな?」
「……ッ!」
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