第二部 WONDERING DESTINY
CHAPTER#9
DARK BLUE MOON 〜Sapphired Moment〜
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ガラス張りで覆われたカフェテラスに脚を踏み入れた少女は、
目当ての人物達を探すため小さな首を巡らす。
しかしその必要もなくすぐ、
「空条 シャナ様ですね?」
早朝なのに顔色の良い若いウェイターが、丁寧な物腰で自分に声をかけた。
「……」
「こちらへどうぞ」
沈黙を肯定と受け取ったのか、ウェイターは先を促し店の奥の方に自分を案内する。
よく磨き込まれたガラスを透化して朝の陽光が柔らかく降り注ぎ、
屋内のなのに清涼な空気が胸を充たした。
滑らかな天然石の床を歩きながら、
やがて見慣れた人物が自分の存在に気づきこちらに手をあげる。
「Good−morninge! シャナ!」
「おはよう。シャナ」
「……よう」
既にテーブルに着き朝食を取っていた二人の青年と一人の老人が、
各々の態度で自分に朝の挨拶をかける。
「……えぇ」
少女は静かな声でそう答えると、老人のすぐ隣の席に腰掛けた。
焼けたばかりのパンと、焙煎仕立てのコーヒーの薫りが届く。
「昨日はよく眠れたかね?」
初老の男性、ジョセフ・ジョースターが和やかな声と表情のまま、
繊細な装飾の入った陶器のカップに紅茶を注いで自分に差し出す。
彼の邸に住んでいた時、幾度と無く繰り返された朝の光景。
「えぇ、まぁ」
少女はカップを口元に運びながら、浮かない表情で素っ気なく返した。
(?)
その少女の様子を、ジョセフは敏感に察知する。
血の繋がってない赤の他人とはいえ、数カ月以上も一緒に暮らした者、
少女がいつもと違う事はすぐに解る。
ましてや並々ならぬ洞察力を持つ彼なら尚更のコトだった。
「……」
やがて少女の前に色鮮やかなサラダや澄み切ったスープ、
出来たて貝のポアレなどが運ばれ少女は無言のまま機械的にソレを口に運ぶ。
いつもの彼女を知っている者なら、明らかに違和感を覚える態度だった。
「……」
彼女の様子を考慮したジョセフは、それとなく自分の孫である承太郎に助け船を促す。
しかしその孫は自分の視線に気づいているのかいないのか、
朝から健啖にモノを口に運ぶのみ。
テーブル中央に置かれたハムやソーセージ等をロクに切りもせず、
チーズや添えられたハーブと一緒に忙しくなく咀嚼している。
やがてようやく自分に向き直った彼から差し出されたものは、
「つげ」
という一言と空のコーヒーカップのみだった。
(むうう……こやつは……鋭いのか鈍いのか……我が孫ながら本当に解らンのぉ……)
ジョセフは苦虫を50匹噛み潰したような表情で、
チャイニーズ・タイガーの絵柄が入った陶器のコーヒーポットで
孫のカップにおかわりを注ぐ。
「ところで、ジョースターさん」
少女の異変に気づいてはいたが波を荒立てない為
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