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歌集「春雪花」
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 振り向けば

  影もなかりき

   夏宵の

 想いぞ痛む

    片割れの月



 日も暮れて…夜が現を覆い始める…。

 家には灯りがともり、そよ風が稲穂を揺らしている…。

 その景色に…彼はいない。
 いつでも…彼のことを考え、いつでも…彼のことばかりを想い…あるはずのない姿を探してしまう…。

 そうして胸は痛み…自分の愚かさに辟易する…。

 見上げれば半月が昇っている…。


 彼は今…どうしているだろう…?



 涙なく

  泣きて虚しき

   独り夜の

 君ぞ想いて

    身を抱くなれ



 あぁ…それは我が儘なのだ…。
 彼の傍に在りたい…彼に愛されたいなぞ…叶わない夢は見なければ…傷付くこともないと言うのに…。

 ずっと想い続けるだけ…得られぬ温もりは誰かの…私以外の誰かのもの…。

 ただ…今は、自分を抱き…堪え忍ぶだけ…。


 それが…私の人生、そのものなのだろう…。




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