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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百四十五話 勅令の波紋
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思っているのかな?」
「そうでは有りません。ですが、彼が死ねば良いと思う人間は少なくないと思いますが」
ルパートは瞳に皮肉な色を湛えながら私の質問に答えた。言外に貴方もその一人でしょうと言っている。その通りだ、私はそれを望んでいる。しかし問題はそれで済むとは思えないことだ……。
「彼が死んでも、改革が潰えるとは限るまい。ヴァレンシュタイン元帥はこれまで誰も考えなかったことを考えた。彼に影響を受け同じ事を考え実行しようとする人間はこれからも出続けるだろう」
「……」
ルパートに分かるだろうか。帝国において貴族の特権は神聖視されていた。フェザーンの中立も同じように尊重されていた。しかしヴァレンシュタイン元帥はそのどちらも否定した。貴族の特権もフェザーンの中立もこれまでのように尊重される事は無い……。
「今回、彼の改革が実施されなくとも、ヴァレンシュタイン元帥が帝国という大地に改革の種を播いたのは事実だ。いずれ種は芽吹くだろう、そうなれば貴族たちの時代は終わりを告げる事になるだろうな」
「では自治領主閣下はヴァレンシュタイン元帥の暗殺は意味がないとお考えでしょうか?」
何処か挑むような眼差しでルパートはこちらを見る。
「そうではない、現時点で同盟が弱いままでの改革は望ましくない。改革が実現すれば否応無く宇宙は統一へという流れになるだろう。元帥が暗殺され帝国が混乱してくれれば同盟は戦力を回復する事が出来る。出来る事なら改革はその後であって欲しいものだ」
しかし、そう上手く行くだろうか? いや、上手くいったとしても一時的な事態の先延ばしでしかないだろう。そして暗殺が成功せず帝国が改革を実施するようなら、帝国による宇宙統一が実現性を帯びてくる……。
どうやら帝国による宇宙統一を前提とした戦略を考える必要が有るだろう、早急にだ。総大主教にもそのあたりを伝えておくか……。
帝国暦 487年10月15日 オーディン 宇宙艦隊司令部 ギュンター・キスリング
「エーリッヒ、随分と強気な発言だったな。らしくないぞ」
「貴族達には分からないだろう、そんな事は」
「まあ、そうだな」
宇宙艦隊司令部の応接室でエーリッヒは穏やかに微笑んでいる。ようやくこの日を迎えて少し気が楽になったのだろうか、エーリッヒは落ち着いた雰囲気を漂わせている。黒真珠の間で見せた苛烈さ、酷烈さは欠片も無い。
「ギュンター、警護のほうを頼むよ。私はまだ死ねないんだ、宇宙から戦争を無くすまではね」
「分かっている。必ず守ってやるさ」
「私だけじゃない、陛下やリヒテンラーデ侯、ゲルラッハ子爵、それにエーレンベルク元帥、シュタインホフ元帥もだ。多分一番狙われるのは私だろうが間違いの無いように頼む」
そう言った
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