もしもトウカが剣士さんじゃなかったら2
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闘に一回ぐらい怪我の心配をしてくれたから薬草ですぐ治して見せた。
お強かったんですねって、少しひきつった顔で言っていた。だから、君ほどじゃないよって返しておいた。
強い魔物を次々殴る。蹴る。首をギチギチと締める。壁に死ぬまで何度でも叩きつける。踏む。心臓を狙って、打ち込む。
ただの一度も短剣を使わなかった。グローブをしていても慣れないから手が痛くなったり、足に血豆が出来たんじゃないかってぐらい傷んだりした。でも全て気にならなかったんだ。煩わしいなら薬草もアモールの水もあるから、治せばいいだけだったし。
エルトとヤンガスがどんどん無口になっていくのも、次々と襲い来る魔物にできるだけ気づかれないようにして戦闘を避けるためだと思った。だから、楽しくって、幸福感すら 覚えた私も口をつぐんだ。
血を浴び、魔物の悲鳴を聞き、自分の命をぎりぎりで守り抜くのはあぁ、なんて楽しいんだろう!これが生きてるってことなんだね!
部屋の中でひたすら怯える灰色の日々にはなんて勿体なかったんだろう!私はここで、こんなにも「生きれる」というのに!
急所を狙って鋭く一撃。めり込んだ拳が、グローブのトゲが魔物の体に穴を開けた。ずぶりと沈んだトゲを抜けば血が溢れ出る。倒れた魔物の首の骨を折ってトドメをさす。
足で思いっきり力を込めて踏みまくれば私にだって魔物の首の骨ぐらい折れるということを学んだ。もし囲まれたなら、連打で目の前の魔物を殴り、蹴り、殺していけばいい。
最初は拙くても今はまぁまぁ洗練されたかな……?少しずつ形になってきて、技として成立してきたかな。正拳突きがモグラを一撃で仕留める。スキッパーは踏み殺せる。
あぁ、あっちが、最深部かなぁ。
「……狂われた。ううん……あれが、彼の」
ボソリ、エルトが何かを言ったように思う。よく聞き取れなかった。
勝たないと、すべてを倒さないと。私は生き延びたいんだ。もっともっと、「生きる」ために。そして今度は守るために。
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