もしもルゼルが生まれていたら2
[2/3]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
よ」
「私は育ててくれた恩を返したいんだ」
「兄上は何だって、一回やったら出来ちゃうから……私は頑張らないと勝てないなぁ」
幼子から告げられたとは思えない言葉。それは俺だってそうだけど。いつの間にか彼女は比喩でなくたくましく、そして優しく育っていた。
反するように体の弱い俺はどんどん何も出来なくなって、勉強ぐらいしか出来なくなって、本の内容を覚えるしかなくなって、ならせめて、もしもの時に……彼女ですらなんとかできなくなる困難に陥ったらこのちっぽけな命を懸けて助けてやろう、それが俺の務めだって思うようになっていた。
彼女は年を重ねる度にどんどん強くなる。国一番の剣士は負け知らず、周りの声で戦わされた近衛隊長との戦いにいともやすやすと勝利したのは六歳の時、七歳の時は魔導師と戦って魔法を斬り、弱点すらその力でねじ伏せて勝利した。
そんな彼女は毎日楽しそうで、だけれども俺と話すときぐらいしか休みがなくて。八歳のときかな、城に引き取られてきて小間使いになった子……つまりエルト……と友達になった時は自分のことを棚上げして安心したぐらいだったから。
・・・・
「あ、あの……義兄さん?」
「まだ話は終わってないよ。話することしか出来ない俺の話にも付き合えないの?あと義兄さんって呼ばないで」
トウカと似つかぬトウカの兄貴……血が繋がってないから当然だが……は不機嫌そうにベッドの上で溜息を吐いた。挨拶に来て、トウカの両親に歓迎されて、そして一番の難関であると囁かれた兄との面談はなんというか……妹自慢のオンパレードだ。
深刻そうに語られる言葉の端々に「俺の妹強い」、「妹が可愛すぎて生きる」。そしてゾッとするほど整った顔ですごく睨んでくる。俺が色男だとしたら……神の作った人形という感じの美貌は、なんというか残念だった。
「あのね、トウカはさっきも言ったけど友達すらエルトしかいなかったんだ」
「はぁ」
「呪いを解く旅?俺もついて行きたかった!一発で死ぬけど盾になりたかった!帰ってきたら女ったらしそうなボーイフレンド連れてくるなんて!エルトは何をしてたんだ!」
「ルゼルさん落ち着いて」
「落ち着けるk……げほっ……。あぁごめんね、取り乱したね」
ルゼル兄上の代わりにならなくちゃと微笑んだのを思い出す。今なら言えるぞ、ならんでいいと。出生のすべてを知った今、むしろ逆なのはよく理解出来た。
「トウカを幸せにしなかったら生霊になるし死んだら悪霊になるからね。ふぅ……結婚式いつ?」
今にも呪いをかけそうなほど恐ろしい顔をした後、スッと無邪気そうになった彼はにこにこと……不自然なほど笑って……聞いてきた。
あの妹にしてあの兄あり、最終的に病弱設定どこにいったと言わんばかりの恐ろしい力で腕
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ