もしもルゼルが生まれていたら
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染めて目を閉じていた。他の城の人々と同じように。
呪いで姿を変えられてしまった姫と陛下と共に、動ける者が他にいないか確かめに回っていたとき、僕はバルコニーで倒れていたトウカを見つけた。散乱していた剣を見るに、素振りでもしていたんだろう、星を見ながら。目を覚まして直ぐに大好きな兄を心配して城の二階から飛び降りて屋敷に向かった彼女を追いかけて、見つけたのは兄の前で絶望していたトウカだったんだ。
「……誰だっけ」
「何が?」
「元凶さ。私の兄上をこんなにして、城をめちゃくちゃにした奴のこと……」
「ドルマゲスという、道化師らしいよ」
聞いた瞬間、トウカからぶわりと殺気が巻き起こった。肌を刺すように鋭い殺気は、この場にいないドルマゲスに向かって荒ぶった。
「そう……絶対に倒そうね」
「……え?」
「私は剣士。戦わない道理があるかしら?」
「そこだけ女の子らしくしても無駄だよ……でも、分かった」
「滅多切りにしてミンチにして、踏んずけてヒールの下敷きにしてやる。腕が疼く……」
パキリと指を鳴らしたトウカが、五分後にはドレスを脱ぎ捨てて鎧を纏った剣士になっていたことにはちょっと引くことになるのだけど。剣士を名乗る貴族の令嬢のお陰でこの先の旅が楽だったことには違いない。
余談だけど、旅でトウカに惚れた聖堂騎士に向かって呪いが解けたルゼルが複雑そうな顔をしながら頭を下げていたことが記憶に残っている。
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