機動戦艦ナデシコ
1422話
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を待つ。
「な……くっ! うおおおおおぉぉっ!」
真後ろにいる俺の姿に一瞬驚きの表情を浮かべたものの、次の瞬間には再び床を蹴ってこっちとの距離を縮めてくる。
今度は先程と違って掴むのではなく、握り締めた拳を叩きつけにきたのだが……
「どこを見ている?」
数秒前に呟いたのと、全く同じ言葉が俺の口から出る。
そして俺の前にあるのは、当然のように高杉の背中。
先程と同じく、高杉の目にも留まらぬ速度で動いてその後ろに回り込んだのだが……それから十数回同じ事を繰り返す。
正直、高杉に怪我をさせないようにしてこっちが勝つというのは、少し手間が掛かるがこれが一番だと判断した。
いや、普通に攻撃するだけでも意識を奪えるだろうとは思うんだが、そうすると高杉はいつの間にか意識を失っていたとして、自分の中にある想いに対して完全に決着を付ける事が出来ないだろう。
この勝負で重要なのは、俺が勝つ事でもなく、高杉の心を折る事でもなく、高杉の中にある神楽坂へと恋心をどうにかする事だ。
……だが、それが存外に難しい。
いや、こうして何度も自分の後ろに回り込まれるような真似をして、それでも戦意が挫けないのはさすがと言うべきだろうが。
ただ、もしこの程度で高杉の戦意がへし折れているのであれば、それは神楽坂に対して抱いていた想いはその程度のものだったという事になる。
まぁ、木連の人間は単純な分だけあって精神的にはタフだ。
単純な機構の機械が頑丈で壊れにくいというのと同じような理屈だろう。
それでもこうして何十回となく自分の後ろを取られるというのは、木連でも有数の使い手として知られている高杉にとって受け入れがたい事なのは間違いなかった。
俺の姿が消えたと思えば、次の瞬間には自分の後ろにいる。
そんな事が繰り返されれば、当然のようにその行動を読んだ動きをしてくるのも当然であり、先程から何度か俺の姿が消えた瞬間に裏拳気味に拳を振るってくる事も多い。
そんな事が繰り返されていき……
「まだ、続けるのか?」
「はぁっ、はぁっ、はぁ……と、当然です。まだ俺は負けを認めてはいません!」
高杉が息を切らせながら叫ぶ。
戦いという戦いは起きていないのに、それでも高杉がこうして息を切らせているのは、純粋に精神的なプレッシャーが大きいからだろう。
このまま続けるのもいいが、そうなると高杉が消耗しすぎるな。適度な消耗ならいいけど、こちらも木連の人間の常として限界以上まで頑張るという悪癖がある。
いや、普通に考えればそれは決して悪い事ばかりじゃないんだが、それも時と場合による。
そして今はその時と場合には入らない。
いや、神楽坂に対して強い想いを抱いている高杉にとっては時と場合に入るのかもしれないが
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