第一部
第三章
第二十六話『ありがとう』
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よ。だから翠、逝かないで…」
翠 「ほむらさん…最後に一つ、お願いをしてもいいですか…」
ほむら「何?翠、何でも言って。」
翠 「最後に…笑顔を見せて頂けませんか…」
ほむらは一瞬笑顔を作ろうとしたが、溢れ出る涙がそれを許さなかった。
ほむら「無理だよ翠。だって仲間がいなくなるのはとても悲しいもの…」
翠は幽かに微笑むと言った。
翠 「そうですか…ありがとう…」
そして消え散る刹那、口走った。
翠 「あっ、まどかさん…」
ほむら「えっ!?」
翠は消え、僅かに左のお下げを結んでいたリボンが残った。辛うじてほむらの指に引っ掛かっている状態のそのリボンを、風に取られまいと慌ててほむらは抱き締めた。そしてとても大事そうにそれを握り直すと、立ち上がって空を見上げて語り掛けた。
ほむら「まどか、翠を宜しくね。あなたの紡いだこの世界を守ってくれた、とってもいい子だから…だからどうか、宜しくお願いね。」
いつの間にか夜は明け始め、辺りは段々と明るくなっていった。そこへどこからともなくキュゥべえがのこのことやって来て、ほむらに話し掛けて来た。
キュゥべえ「いやー、今回はあれだけの魔獣を倒したっていうのに、全くと言っていい程カースキューブが手に入らなくって残念だったね。まっ、こういう事もあるさ。」
ほむらは、キュゥべえのこの状況でのその物言いと、一体誰にとって残念だと言っているのかが不明な点に、思わず吹き出してしまった。
ほむら「フッ…。そうね、あなた達はそういう奴らよね。」
そして水平線から顔を出した太陽から朝陽を受けると、ほむらはそれを確かめるように目を細めて一度見、くるりと振り向いて浜辺を後に歩き出した。
<完>
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