第一部
第三章
第二十六話『ありがとう』
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ら!」
ほむらからそう遠くない、一際高い塔の上に翠がいた。翠はほむらの事をまるで叱り付けるかのように見下ろしていたが、ほむらが翠を見つけ目が合うと前を向き言い放った。
翠 「この世に夢を砕かんとする刃があるなら、私は進んで盾となりその切っ先を受け止めましょう。」
翠は構えた弓におもむろに矢を番えた。魔獣の壁が迫る。
翠 「この世界に希望を覆わんとする闇があるなら、私は喜んで贄となり我が身を焼いて照らしましょう。」
翠の番えた矢の先端に光輪が現れる。目前に達した魔獣が拳を振り上げる。
翠 「夢と希望で奇跡を紡ぐ。」
翠は弓を更に大きく引いた。矢の先の光輪に凄まじいまでの魔力が集まり青白く太陽の如く輝く。その時、魔獣の拳が翠に向かって振り下ろされた。
翠 「受けよ!神をも砕く我が命の一矢、メギド・グランデ!」
翠の矢は凄まじい閃光と共に放たれた。付近にいた魔獣達は一瞬で消し飛び、メギド・グランデの一矢はその進行上の魔獣を砕け散らせながら飛んだ。そしてその矢が発する衝撃波は魔獣の壁の両翼に広がり、全ての魔獣をガラス化させて行った。
へたり込んだほむらの眼前にそそり立っていた魔獣の壁は、さながら海にせり出した大氷河の如くバリバリと轟音を立てて崩れ落ちて行った。
?
魔獣ひしめく海の上空で、亮は妙に清々しそうに言った。
亮 「そうか…。やっぱり魔法は少女にこそ相応しいようだね。」
するとその亮と背中合わせに宙に浮いているまどかが嬉しそうに答える。
まどか「でしょ。」
亮 「納得したよ。でも、ちょっと悔しいかな…」
まどか「ンフフ…」
そして二人が光りの粒子となって消えた後、その場をメギド・グランテが通過して行った。
?
空は塗装が?がれ落ちるかのように元の夜空へと戻り、周りにあった白い塔も崩れ落ち魔獣の残骸もろとも消えて行った。
辺りが元の夜の浜辺へと還って行く中、高い塔の上にいた翠が力無く落下していた。
ほむら「翠ぃ!」
ほむらは翠の名を叫ぶと、落ちて来る翠を受け止めるべく走った。空中で飛び付くも、二人は地面に落ちて転がった。ほむらは左手一本でどうにか翠を膝の上に抱え込んだ。
ほむら「翠…」
名を呼ばれ、うっすらと目を開ける翠。
翠 「ああ、ほむらさん…」
翠は弱々しく答えると、その右手でほむらの折れた右腕に触れた。ほむらの右腕は鈍く光り、接合され元に戻った。
ほむら「止めて翠、そんな事しないで。」
翠は虫の息で言う。
翠 「ごめんなさい、ほむらさん…私はあなたに勝手な理想を懐いて、それを押し付けてしまいました…」
翠はもう目が見えないのか、時折ほむらから視線を外してあらぬ空の彼方の方を見た。
ほむら「そんな事はどうでもいい
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