第一部
第三章
第二十六話『ありがとう』
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。」
直 「は〜…ですが私、カオスキューブのノルマ稼ぎが辛いんですよね、これが。」
既に電話を切り、独り遠くを見詰めている翠。それに詩織が気付いた。
詩織 「どうかしたの、翠。何、間違い電話だった?」
そう言われると、翠は他の子の方に向き直して言った。
翠 「突然ですが。私行かなくては、そしてやらなくてはならない事があります。」
その翠の唐突な発言にみんなは驚いた。
詠 「何?どういう事なの?」
詩織 「電話で何か言われたの?」
直 「誰だったんです、電話の相手?」
しかしそんなみんなの質問に対してすぐには答えず、翠は暫く天を仰いでからまた視線を戻すと笑顔を作って言った。
翠 「御免なさい。上手く言えないんだけど私には分かるの、自分の使命が、そして運命が。」
結果として翠はその運命から逃れられなかった。親の期待が子の重荷となるように、今際の陽子の完璧な魔法少女になってという願いは、その真意とは裏腹に呪いとなって翠を縛り付けていた。
翠の作り笑顔が消えて行く。
翠 「結局これは、私が魔法少女になった時に決まった事、私が求めた願いの帰結なの。」
完全に笑顔が消え、物寂しげに続ける翠。
翠 「私はもうここには戻っては来られないでしょう。皆さんとはこれでお別れです。」
詩織 「翠、突然何言い出してんのよ。訳分かんないよ、もう…」
そんな詩織を詠は制し、そして言った。
詠 「そう…そうなのね。それはきっとあなたが魔法少女になった瞬間から背負った宿命なのでしょうね。だから他人の私達にはとやかく言う権利は無いのでしょうね。でもね翠、あなたにはその運命を変える力がある筈よ。だってキュゥべえが言っていたもの、あなたはインキュベーター史上最大の魔法少女だって。」
翠 「キュゥべえがそんな事を…」
詠 「ええ、そうよ。キュゥべえはあなたならこの宇宙すら破壊出来るって。」
詠は歩み寄り、翠の手を取って続けた。
詠 「だからあなたは自分の運命をその力で変えてしまえばいいのよ。そしてまたここに戻って来てよ。絶体絶命の中どんなに苦しくても、もし一縷の望みがあったのならそれに託して帰って来て。だって私達は大切な仲間だもの。私、あなたの無事を信じて待たせて貰うからね。」
翠は詠の言葉に感極まって落涙した。そんな翠を詠は抱き締めた。事の重大さに気付いた詩織も翠に歩み寄ると泣き言を言って来る。
詩織 「嫌だよ、翠。幸恵も陽子もいなくなっちゃってて、その上翠までいなくなったら私独りぼっちになっちゃうじゃない。そんなの嫌だよ。」
涙ながらに翠が諭す。
翠 「あなたは独りじゃないよ、詩織。詠さんも直もいるでしょ。」
詩織 「だって二人共静沼だもの。私学校で独りだよ。」
翠 「いい、詩織。あなたは魔
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