第一部
第三章
第二十六話『ありがとう』
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ある日の午後、高台にある公園から亮が見滝原の街を感慨深げに見下ろしていた。その背後にキュゥべえが現れる。
亮 「やあ、丁度良い時に来てくれたね…」
キュゥべえは瞬きをして首をかしげた。
亮 「実は今、この街とお別れをしていたところなんだ…」
キュゥべえ「なるほど、君もいよいよ本格的に始動するって事なのかな。」
亮はキュゥべえの方を向いた。
亮 「キュゥべえ、僕はこれからほむらのいる浜の端に行く。だから翠にその事を伝えて、彼女にも浜の端へ行くように言ってくれないかな。」
キュゥべえ「君の目的はほむらなのかい?それとも翠なのかい?」
亮は目を閉じ、自分でも判らないと言った風に答えた。
亮 「まあ…どっちも…かな…」
そして次の瞬間、亮はキュゥべえの目前から消えていなくなって見せた。
残されたキュゥべえは尻尾をくるりと回すと呟いた。
キュゥべえ「参ったなあ…まあ、翠を諦めればそれで済む事なのだろうけど…」
?
その日の夜のとばりが下りる頃、魔獣狩りにいつもの公園に行こうと靴を履きかけていた翠の背後にキュゥべえが現れた。
キュゥべえ「やあ翠、出掛けのとこ悪いんだけど、ちょっといいかな?」
翠はいきなり部屋の中に現れたキュゥべえにちょっとムッとした。いて欲しい時に妙にいないくせにこの出掛けのタイミングで現れた事と、今更ながらにプライバシーの侵害を感じたのだ。翠はキュゥべえに背を向けたまま腰を落とし、靴紐を結びながら不機嫌そうに言った。
翠 「で、何…」
キュゥべえ「実は、君に転属してもらいたいんだけどね…」
翠 「えっ…」
翠は困惑した。あの超巨大魔獣や響亮の事を考えると、今の見滝原にこそ自分が必要だと考えていたからだ。
キュゥべえ「浜の端という所に行って欲しいんだ。」
翠 「浜の端?」
キュゥべえ「うん。実はね、そこはほむらに行ってもらった場所なんだけどね…」
翠 「えっ!」
翠はキュゥべえの方に振り返った。
翠 「まさか、ほむらさんに何かあったの…」
キュゥべえ「いや、ほむらは健在だよ。何かあったというよりこれから何か起こりそうなんでね、予め備えておこうと思ってね。」
翠はキュゥべえの方を向いて立ち上がって言った。
翠 「キュゥべえ、あなたは知らないかもしれないけど、ついこの間ここにマミさんですら滅多に見た事がないって言ってた大型魔獣より、更に遥かに巨大な魔獣が現れたばかりなんだよ。こう言ってはなんだけど、私以外にあんな奴に対抗出来る者はいないと思うよ。見滝原はどうするつもりなの?」
キュゥべえ「う〜ん、その魔獣の事なら知ってるけどね…多分、もう見滝原にそんな奴は現れないんじゃないのかな。」
翠 「何それ、知ってて言ってるの?そんなあやふやな憶
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