第一部
第三章
第二十五話『神をも砕くだろう』
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詠 「翠…」
だがここで詠に出来る事は何も無かった。たとえ共に戦ったとしても足手纏いになるのが落ちだ。
詠 「気を付けてね…」
詠は自分でも気の利かない事を言ったと思った。しかし他の言葉も見つからなかった。撤退を進言する手もあったが、それによってもたらされる実世界の被害がどれ程のものか分からなかったし、存在する限りいつかは倒さねばならない相手なのだ。それにたった今し方、みんなを守って見せると大見得を切った翠が問題なく倒せると言った以上、絶対に退く事は無いだろうとも思われた。
翠 「はい。」
そして翠は単身、魔獣へと向かって行った。
?
遥か遠くの塔の上で、まるで音楽に乗っているかのように亮は体を左右に揺らし足をぶらぶらさせながら座っていた。
亮 「ンフ、そう来なくっちゃね。」
亮は満足そうに微笑んだ。
?
翠は超巨大魔獣へと向かっていた。すると翠が思っていたよりも早く会敵する事となった。その巨大さゆえ緩慢に見える歩みが実は相当な速さであったからだ。
先攻したのは翠だった。塔の上に立つと翠はメギドを一発魔獣の胸の辺りに放った。メギドの一矢は魔獣を貫き、その部分をガラス化させた。しかしその魔獣の大きさからすればその傷は全く取るに足らないもので、魔獣は全く怯むことなく翠に反撃して来た。魔獣がその右手で翠を払いに来た。とてもノロそうに見えたが、実際にその手が近付くと恐ろしいまでの速度である事が分かる。軌道上にある塔を粉砕しながら接近する巨大な崖のごときその手を、翠は塔のてっぺんが砕ける程の力で蹴り上がって躱した。魔獣はまるで蚤を潰そうとするようにその手を振り回し翠を攻め立てた。翠は弓を構えようともせずにひたすらに躱し続けた。
魔獣の攻撃で塔が崩れ地面が瓦礫だらけになって足場が無くなって来ると、翠は魔獣から離れるように動き出した。しかし翠の離脱速度より魔獣の追跡速度の方が上回っているようで、翠は魔獣から大きく離れる事が出来なかった。
翠 「チッ…」
翠は舌打ちすると今度は魔獣の横へ回り込むような動きをし始めた。そして魔獣の攻撃の合間を縫ってメギドを撃ち始めた。メギドにはチャージ時間が必要なため、翠はよりタイトな回避をしなければならなくなった。
翠は百発以上のメギドを放ったが、その超巨大魔獣には全くと言っていい程効いてはいないように見えた。だが翠の方も魔獣の猛攻を全て躱し切り、その上全く疲れた様子も見せてはいなかった。その戦いは持久戦の様相を呈して来た。
亮 「フフッ、いつまで持つのかなぁ。」
亮がさも楽しげに呟くと、まるでその声に応えたかのように翠は動いた。
翠は一旦後方に退き魔獣との距離を稼ぐと、塔の上で足に魔力を注ぎながら膝を曲げた。そして魔獣の攻撃に合わせ、
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