第一部
第三章
第二十四話『トロピック見滝原』
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冴子 「私さあ、この町って大っ嫌いなんだよね。私達を誰も助けてくれなかったし、同級生は私達をいじめるばっかりだったし、そこそこ人はいる方だけどダサい田舎だし…絶対こんな所から出て行ってやるって思っていたんだけどさ…なんだかここから離れられなくなっちゃったんだ。いい思い出なんて一つも無いのにね…」
ほむらはふと見滝原を思った、自分にとって極めて特別なその街を。そしてその地を離れるべきではなかったのではないかと少し後悔した。そしてここでの役割が終わったのなら、見滝原に帰るべきだという気がしていた。
冴子 「ほむら、あなたにお願いがあるの。」
ほむら「なぁに?」
冴子 「とっても図々しい身勝手なお願いなんだけど…」
ほむら「そう…」
冴子 「私の為に上辺だけでいいからしっかり付き合って貰えないかしら。」
ほむらが冴子の方を向くと冴子はどうだと言わんばかりの顔でほむらを見ていた。
冴子 「あなたって自分に嘘吐くの上手そうだから出来るんじゃないの、そういうの。」
顔を合わせたまま、そのあまりのぬけぬけしさにほむらは苦笑いを浮かべてしまう。
冴子 「どお?田舎者の厚かましさは。イヤミったらしい同情を引くような身の上話といい、この町共々嫌になったんじゃない?」
二人はお互いに向き合ったまま笑みを浮かべ、おもむろに立ち上がり対峙した。僅かな間を挿んで髪を手で梳くと、ほむらは言った。
ほむら「ええ、私は構わないわ。」
冴子 「そう、良かった。ありがと。」
冴子はホッと胸をなで下ろすとくるりと後ろを向き、やや申し訳なさそうに言った。
冴子 「じゃあさっそくなんだけどさあ、ちょっと付き合って欲しい所があるんだけど…」
ほむら「どこかしら?」
冴子 「ふふっ、この町唯一の娯楽施設よ。」
?
放課後、詠はファストフード店に招集を掛けた。詠と直の許に翠と詩織がやって来た。
翠 「何でしょうか、リーダー。」
翠が茶目っ気気味に尋ねると、詠は鼻息荒く答えた。
詠 「トロピック見滝原って知ってる?」
その質問に翠はハッとさせられた。
詩織 「ええ、知ってるわ。割と最近オープンした密閉式複合型温室施設の事でしょ。」
詩織がそう答えると、翠は思わず詩織の方を見やった。どうかした?と詩織も何気に翠を見返す。
詠 「そこにさあ、今度みんなで行ってみないかなあって相談なんだけどー…」
翠の怪訝な表情を否定的にとった詠は説明を付け加えた。
詠 「親睦をね、もっと私達親睦を深めておいた方が良いと思うのよ、私は。」
三人は翠の反応を待った。翠は落ち着くと笑顔になって答えた。
翠 「そうですね…そこなら私も是非一度行ってみたいと思っていた所です…」
三人はホッとした。
詠 「そう…良かった
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