第一部
第三章
第二十四話『トロピック見滝原』
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うに座らせてくれて、それから変身を解くとお菓子を取り出したの。自分では分からないんだけど、私よっぽど物欲しげな顔をしていたのね。その人なんだか腹減ってそうだな≠チて言ってそれを私にくれたわ…」
その話を聞いてほむらは呟いた。
ほむら「佐倉…杏子…」
すると冴子は突然豹変し、ほむらに両手で掴み掛かるように迫った。
冴子 「ほむら!知っているの杏子さんの事を?」
ほむら「えっええ…」
冴子はうっとりするように空を見上げ胸の前で手を合わせた。
冴子 「そっかぁ…やっぱり杏子さん、まだいたんだ。そうだよね、私なんかよりよっぽど強い人だものねぇ…あっほむら、ひょっとして杏子さんって今見滝原ってとこにいるのかな?」
ほむらは少し迷ったが、変に隠し立てしない方がいいと思った。
ほむら「冴子、聞いて。見滝原にはね、廃工場の魔獣と呼ばれた特殊な魔獣がいたの。それを退治する為に、少し前に見滝原に杏子は召集されたの。そしてその戦いの中で杏子は…」
ほむらは冴子の悲しげな顔を見て言葉を止めた。冴子は遠い目を海に投げ掛け言った。
冴子 「そうなんだ、つい最近の事だったんだ…」
ほむら「冴子…」
冴子 「ありがとね、ほむら。」
ほむら「えっ?」
冴子 「教えてくれて、知らせてくれて。」
ほむら「…」
冴子 「きっと杏子さんがあなたを通して私に伝えてくれたのね。ごめんね、ほむら。今だけそう思わせて欲しいの…」
ほむら「ええ、きっとそうね。」
暫く二人は沈む夕日を見詰めた。そしてやや唐突に冴子はまた話し始めた。
冴子 「私さ、杏子さんから魔法少女の事を聞いてそれになろうって思ったの。幸い私には資格が有ってさ、まあそれって私が親から貰った唯一の役立ったものって気がしてるんだけどね。それで私、弟が両親から大切にされるように願って魔法少女になったんだ。そしたらあれって面白いよね、だって手の平を返すように弟は大事にされるようになったんだもの。私は魔法少女になる時にそのまま家族から離脱しちゃったけど、別に寂しくはなかった。自分で生活出来て嬉しかったし、弟が幸せならそれで良かったから。」
冴子の表情は戻っていた。それを見てほむらは少し安心した。
冴子 「なんか傍から自分の家族を見てるっていうのも面白いものよね。弟は私の歳を追い越して高校とか行くようになっちゃうしさ、何だか彼女っぽい子が出来たりしちゃってさ…」
冴子は懐かしそうに微笑んでいた。
冴子 「私はさ、弟が家を出たらこの町を離れて、出来れば杏子さんに一度会ってせめて御礼くらい言おうとか思っていたんだ。そしたらさ…」
冴子はまた顔を埋めた。
冴子 「弟が大学受験の頃に家が火事になってさ…結局みんな死んじゃったんだ…」
ほむらは一瞬冴子を見た。少し間を置いて冴子は顔を出した
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