第一部
第三章
第二十三話『遺譲』
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静沼中一年生のその教室の中でそれは起こった。どんな問題でも解決してくれるという、魔法少女になるという究極の逃げ道を得た直は、とてつもないまでの勇気を持つ事が出来た。休み時間になり、直に今まで通りの嫌がらせをしに来た三人の女子に対し直は敢然と立ち向かっていった。いつもの直との様子の違いに二人は怯んだが、いじめの中心人物はそうはいかせないとばかりに虚勢を張った。
女子 「何だその生意気な態度はよう!」
その女子は直の胸倉を掴むと突くように押し付けた。すると直はその腕の肘の部分を両手で掴み、そこを強く下に引きながら思いっきり相手の顔面に頭突きをしてのけた。
バチッ!
何か嫌な音と共に頭突きを顔面に受けた女子はもんどり打って後ろに倒れ、顔を両手で押さえ込んで動かなくなった。教室内は一瞬の静寂の後、騒然となった。二人の女子に抱えられその倒れていた女子は保健室へと連れられて行った。
その日、直に仕返しなどがされる事は無かった。その次の日も、そのまた次の日も、毅然とした態度の直には誰も嫌がらせをしては来なかった。
直は下校中に詠を見つけると、その事を報告しに行った。
直 「詠さん!」
詠 「あら、直じゃない。なんだか嬉しそうね、いい事でもあった。」
直 「はい!詠さん。私、いじめを克服出来ちゃったみたいなんです。」
詠 「そう…」
詠は直が自分では出来なかった事をやってのけた事に感心と感慨を覚え、心からの祝福を贈った。
詠 「よかったわね、直。」
直 「はい!有り難う御座います詠さん。」
詠は直を近くのファストフード店に誘った。そして暫しの閑談の後、詠は言うべき事を告げる。
詠 「直、あなたの問題が解決されたのなら、もうあなたは魔法少女になんかなる必要はありませんよね。」
直 「えっええ。でも私、魔法少女になるっていう後ろ盾があったからそう出来たってだけで、もしそれが無かったら絶対に何も出来なかっただろうし…だっ、だから…その…私、魔法少女になってもいいかなって…」
詠 「直、はっきり言っておくわね。この間一緒にいた翠って子が言っていたように、魔法少女って全く甘くはないものなの。ほんの御礼代わりになってやろうなんてものではないのよ。」
直 「私そんな軽い思いで…」
詠は直を手で制す。
詠 「そうなのでしょうね。でもね、たとえ命を救って貰ったお礼だとしても、なるべきものではないのよ。」
直 「じゃあ、詠さんはどんな理由でなったんですか…」
詠 「私はね…今にして敢えて言うなら、贖罪としてなったって事なのね。とても罪深い者なのよ、私って…」
詠は目を伏せた。その悲しげな顔は直を従順にさせた。
直 「そうですか。詠さん…分かりました、私魔法少女にはなりません。」
詠 「それが
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