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SECOND
第一部
第三章
第二十三話『遺譲』
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の瞬間、翠の脳裏に今際のまどかのビジョンが走った。
 この世界を守って!
 なぜそんなビジョンが突然に走ったのか翠にも分からなかった。しかしそのビジョンは翠の心を強く弾いた。
 (私は何を考えているのだろう…そもそもそんな事を私は望んでいたのだろうか…私が望むものって何だろう、完璧な魔法少女って何だろう…分からない…ではこの世界を守るって何だろう…この宇宙を守るって事か…いや、確かにそれもそうだけどそんな大仰な事に囚われなくったっていい。この星とかこの国とかこの町とか、あるいはもっと小さく今目の前にあるこの四人のコミュニティーとか、先ず私が守りたいものを守ればいいのではなかろうか…)
 翠は本来依存性が高い方の性格だった。なのに短い間に次々と先輩を失い、遂には自分が最古参となり他の者を引かなくてはならなくなってしまっていた。陽子を失ったことや、まどかを討った責任も感じていたし、その時の覚悟も大きく伸し掛かっていた。勝手に追い詰まっていた翠は憑き物が落ちたように囚われる事を止めた。
詩織 「翠…」
 いたたまれなくなった詩織が翠に声を掛けると、翠は表情を緩めはにかんだように言った。
翠  「ごめんなさい、みんな。私はね、この世界を守る盾になるって魔法少女になったの。それでね、完璧な魔法少女になりたいって思っているの。でもそれには随分時間が掛かるだろうし、きっと一人では辿り着けないものだとも思うの。何だか突然にで我ながら変だと思うけど、だからみんなとは旨くやって行きたいの。」
 翠の急変に三人は驚いたが、それ以上にホッとしていた。それにそれは歓迎すべき提案でもあった。
詠  「勿論よ、翠。私達だって是非あなたとは旨くやって行きたいわ。」
 翠は目を閉じ、心地よさ気な顔をして詠に尋ねた。
翠  「詠さん、一つお願いがあるのだけれど…」
詠  「何かしら?」
翠  「このチームのリーダーを務めて欲しいの、どうかしら。」
詠  「その方がいいのね。」
翠  「はい。」
詠  「分かったわ。やらせてもらうわね、私…」
 詠はとても安堵したように手を胸に当て一呼吸してから言った。
詠  「じゃあ、まずはここから出ましょう。そして今日はもうそのまま解散ね。」
 他の三人は小さく頷いた。
 魔法少女達が魔獣空間から出ていなくなると、塔の陰からキュゥべえがトコトコと歩み出て呟いた。
キュゥべえ「やれやれ、今回翠は堕ちずに済んだか。でもこんな事を何千、いや何万回と潜り抜けなくっちゃいけないなんて、やっぱりリスクが高いんだよねぇ。」
 キュゥべえはくるりと尻尾を振った。
キュゥべえ「さっさと利益確保してしまうべきだろうな…」

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