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SECOND
第一部
第三章
第二十三話『遺譲』
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んないいかな?」
 詠は他の三人に目配せをして確かめた。三人は頷いて応えた。
詠  「翠が今住んでる所、直は魔獣に襲われた後に行ったわよね、詩織は行った事ある?」
詩織 「ええ、一度。その時に魔法少女の事をいろいろ聞きましたから。」
詠  「そう。あそこってね、マミさんの買い取り物件だったんだけど、あのマンションが建つ前にマミさんの御両親がお店を建てていた場所でもあったのよ。」
翠  「…」
詠  「マミさんはご両親を亡くされた時に魔法少女になったのだけれど、その後そのお店を買い取ろうとして頑張ったのよね。魔獣退治だけではなく討伐任務も請け負って稼いでいたの。討伐っていうのはね、魔法少女の中で任務を投げ出したり魔法を私的な目的で使用したりした者を粛正する仕事の事なの。マミさんには目的があったから、最初の頃はなりふり構わず稼ぎに行って、仲間なんて作ろうともしていなかったんですって。」
翠  「えっ?あのマミさんが…」
 と、翠は口に出したが、すぐに杏子と梨華の話を思い出し独り合点した。
詠  「ええ、私もそれを聞いた時は驚いたわ。他の魔法少女なんてものは邪魔な競争相手で、仲間になんてなると討伐対象になった時にやりにくくなるだけだと思っていたんですって。それで頑張って稼いでいたのだけれど、そのうち店の建物は取り壊されて更地になり、更に周りの土地と合わされてあのマンションの工事が始まったの。ようやくまとまったお金が出来た頃にはもうそこにはご両親のお店の面影も何も無くなっていて、ただあのマンションだけがそびえ立っていたんですって。だから仕方なく代わりにって感じであのマンションの一番高い部屋を買い取ったの。それでその時マミさん、窓から街を見下ろしていたらなんだか虚しくなってしまったんですって。もう自分が知っている人も自分を知っている人もいない、故郷なのに見ず知らずの土地になってしまった街にね。そして悟ったんですって、魔法少女には魔法少女しかいないんだって。」
 ここで翠は、自分よりマミの過去を知っていてより理解しているような詠に対して、無意識の内に嫉妬をしていた。自分の方が僅かとはいえ早く知り合い、そして同じ学校に通っていてより近しいと思っていたマミという存在が、何だか詠に盗られたような気になってしまっていたのだ。
詠  「だからマミさんはね、誰も死なないチームを作りたかったのよ。ずっと仲間でいられる、いつまでもお互いを思っていられる孤独の無いチームを。」
詩織 「それは、素晴らしいわねぇ。」
 うっとりしたように詩織が答えたのを聞いて、翠は少し苛立ちを覚えた。それが良い事だなんて翠にだって分かり切っていた。今までだって失いたくって仲間を失った訳ではない。だが翠にしてみれば、そもそも魔法少女とは臨死を受け入れた者なのだと教わってなったものだし
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