第一部
第三章
第二十三話『遺譲』
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た。
詩織 「やっ、痛い!」
詠 「何、何なの?翠!止めて!」
だが翠は止めず、左手で足を掴んだまま右手をその折れた部分にかざした。二人は翠にかざされた骨折箇所から柔らかな光のようなものが発せられているように感じた。そしてそれはすぐに終わった。
詠 「今の何だったの、翠…」
その詠の疑問には詩織が答えた。
詩織 「…治ってる。私の足、治ってるよ…」
そう言って詩織は今まで折れていた足を動かして見せた。
詠 「えっ、翠ってこんな事出来たの?」
だが翠自身も不思議そうにその自分の手を見ながら言った。
翠 「分からない…でも出来る。」
そして翠は続けて詩織の折れた腕を取った。治療だと分かっていても、さっきの痛みの経験もあって詩織はビクッとした。翠は同じように手をかざしそれを治した。
詩織 「あっ、ありがとう、翠…」
詩織は治った箇所を確かめるように動かしながら少しぎこちなく言った。詠は以前にキュゥべえの言っていた翠は自分の力を理解出来ていない≠ニいう話を思い出した。
詠 「翠…今のはあなたが元々持っていたその力に目覚めたって事なの?」
翠 「…いえ、違うと思う…これは多分陽子の力だから…」
詠 「陽子って、あの?」
キュゥべえ「へー、陽子から能力を遺譲されていたとはね。しかし翠、君が治癒能力を持つだなんて、正に鬼に金棒だね。」
突然のキュゥべえの登場に三人は驚いた。
詠 「キュゥべえ、あなた今まで…」
翠 「遺譲って、どういう事?」
詠の発言を遮って翠は質問をした。キュゥべえは翠に答える。
キュゥべえ「遺譲っていうのはね、極希に起こる現象でね、円環の理に帰そうとする魔法少女がその能力を別の魔法少女に譲り渡す事をそう呼んでいるんだよ。」
翠 「魔法少女の能力の譲渡は可能なの?」
キュゥべえ「普通は無理さ。でもまあ、その方法が全く無い訳じゃないけどね。」
翠は考え込むように黙った。その隙を突くように詠はキュゥべえに言った。
詠 「キュゥべえ、あなたにお願いがあるのだけれど。」
キュゥべえ「何だい?」
詠 「廈横直の魔法少女に関する記憶を消しておいて欲しいのだけれど。」
キュゥべえ「それって君が決める事じゃないんだけどねえ。まっ、翠にでも頼まれたら断れないかな。」
キュゥべえはなぜか翠に話を振った。右手を顎に当て俯いていた翠はそれを聞くと、さほど興味もないといった風に目だけを配せてお座成りに言った。
翠 「じゃ、そうしておいて。」
キュゥべえ「すぐじゃなくていいかな。」
翠 「構わないわ。」
詠は早くして欲しかったが、翠にそう言われてしまうと何も言えなかった。
キュゥべえ「すまないね、実は今ちょっと忙しくしててね。本当は今日も来るつもりじゃなかったん
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