第一部
第三章
第二十三話『遺譲』
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いいわ。」
詠は敢えて直に記憶が消される事を言わなかった。その事を言えば直は魔法少女にならないという決心を変えてしまいかねないと思ったからだ。そして早々にキュゥべえに直の記憶を消すように頼もうと考えていた。
?
その夜、いつもの公園に魔獣狩りをすべく翠と詠と詩織が集まっていた。
翠 「詩織…今日は出来るだけあなた一人で魔獣と戦ってみて欲しいんだけど…」
詩織 「うん、やれるだけやってみるね。」
翠 「無理は絶対に駄目だよ。」
詩織 「分かってるよ。あんまり過保護にしないでよね、私が成長出来なくなっちゃうでしょ。」
翠 「うん…」
三人は魔獣空間へと入って行った。
魔獣空間の中に特に変わった点は見受けられなかった。通常サイズの魔獣達が散見されるだけで、全く危険を感じる事は無かった。翠と詠がすべき支援は、せいぜい詩織が囲まれないようにすることぐらいだった。その余裕ある戦いに、詠が翠に話し掛けて来た。
詠 「ねえ、翠。私最近キュゥべえに会えないんだけれど、あなたはキュゥべえに会ってる?」
翠 「いいえ。でもそう言われると、私もここのところキュゥべえは見掛けてませんね。何か用でもあるんですか?」
詠 「ええ、ちょっとね…」
ふとここで詠はキュゥべえの言葉を思い出した。あの翠は使い捨て≠ニいうキュゥべえの言葉を。詠はそれを翠に伝えるべきかで迷い、言葉を詰まらせた。そして翠がその何か言いたげな詠の様子に気を取られた僅かな隙にそれは起こった。
詩織 「きゃー!」
詩織の悲鳴に二人が振り向くと、魔獣にはたかれた詩織が地面に叩き付けられている所だった。
翠 「詩織!」
翠は即座に反応して飛び出し、空中で詩織を打ったと思われる魔獣に矢を叩き込んでそれを倒すと、そのまま周囲の魔獣を殲滅してしまった。
詠に抱えられた詩織の許に翠がやって来ると、詩織は少し照れたように言った。
詩織 「ハハハ、カッコ悪いね。」
詩織は命に別条はないようだったが、片足と片腕が骨折してあらぬ方へと曲がっていた。その姿を見た翠が険しい表情だったので、詠は翠が詩織のミスを怒っていると思い取り繕いに行った。
詠 「ふふ、そうね。でもミスは誰にでもあることだわ。それに私達は生き残れればミスとは言えないくらいだからね。」
だが翠は相変わらず険しい顔をして詩織を見下ろしていた。
詠 「あのさ…翠…」
翠 「出来る気がする…」
詠 「へっ?」
唐突の翠の発言に詠も詩織も意味が分からなかった。しかしそんな二人にはお構いなしに翠は詩織の許へしゃがみ込むと、ちらりと詩織に目配せして言った。
翠 「少し痛いかも…」
詩織 「えっ?」
詠 「なっ、何…」
翠は詩織の折れた足を掴むとそれを引っ張って正し
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