第一部
第三章
第二十一話『これはもう使い物にはならない』
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おっ奥さん、それが娘さんのお名前で?」
しかし、一縷の涙と共に幸恵の母親は叫んだ後、今までの苦悶の表情を一転させ、妙に清々しい顔をして後藤に言った。
幸恵母「すみません刑事さん、私には娘なんていませんでした。どうもご迷惑をお掛けして申し訳ありません。」
そして幸恵の両親は帰って行った。
二人を見送りながら後藤は呟いた。
後藤 「妙…だな。何とも奇妙だ…」
?
翠 「幸恵ーっ!」
血相を変えた翠が、まだ残っている魔獣達を撃ちながら、凄まじい勢いで飛んで来た。翠は幸恵を殴った魔獣をメギドの一撃で退けると、幸恵のいる筈の場所に立った。
翠 「あああ…」
慌てて詠もやって来る。
詠 「翠、幸恵は…」
そこにはぐちゃぐちゃになった幸恵と思しき肉片があるのみだった。
詠 「うっ!ごめんなさい、私…」
その光景を見て吐き気を催した詠はその場から離れた。翠はその場で膝を突くと、手を組んで合わせ目を閉じて言った。
翠 「幸恵、守ってあげられなくってごめんね…」
そんな肉片の前に跪く翠の許に、キュゥべえがやって来た。
キュゥべえ「おや、ひょっとしてそれは幸恵なのかな?」
翠 「ええ、そうよ…キュゥべえ、幸恵の事お願いできるかしら?」
キュゥべえ「勿論だよ、それも僕の仕事だからね。さあ、いろいろ疲れただろう。後は僕に任せて君達はもう帰るといい。」
実際、今の翠に出来る事など無かった。
翠 「それじゃあキュゥべえ、幸恵をお願いします。詠さん、帰りましょ。」
翠と詠がいなくなると、キュゥべえは幸恵の死体を見て呟いた。
キュゥべえ「やれやれ、これはもう使い物にはならないな。」
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