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SECOND
第一部
第三章
第二十話『魔法少女のお茶会』
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は、テレビや映画にのみ出て来る実際には存在していない架空のもの、と思っていた場所であった。暗く汚く何だかジメジメしているその部屋の中には入る事さえ幸恵は躊躇した。だが他に行く当ても無い彼女はそこに住むしかなかったのだ。
 幸恵は意を決し靴を脱いで部屋の中に上がると、その真ん中辺りに持って来た鞄と共に座り込んだ。
幸恵 「何とか…なるよね…」
 幸恵はそう自分に言い聞かせた。

  ?

 翠はマミの部屋にやって来た。ソファーの上に茶色いクマとピンクのウサギを見つけると、それを手で優しく撫でた。
翠  「寂しかったよね…」
 そして三角形のクリスタルテーブルの前に座ると、そのテーブルに手を載せた。そして暫く考え込んでいた翠は思い付いた事を口に出した。
翠  「そうだ!お茶会をしよう。そうすればみんなきっと…」

  ?

 朝、幸恵は憤っていた。ぼろアパートの薄い壁は隣家の騒音を遮ろうとはせず、一晩中男女の痴話げんかや子供のぐずる声や二階の住人の蠢く音を幸恵に伝え続けた。
 ぼろ布団を頭から被って、幸恵は叫んだ。
幸恵 「こんなの堪えらんないよ!」
 逃げるように登校すると、翠が話し掛けて来た。
翠  「幸恵、私今日、魔法少女のお茶会を開く事にしたわ。だからあなたも来て。」
 幸恵はなんじゃそりゃ≠ニ思ったが、あのぼろ部屋に少しでもいなくていいのなら大歓迎だった。
幸恵 「ふ〜ん。あんたの部屋でやんの?」
翠  「うん。あっ私の部屋って言っても前に来たあの部屋じゃなくって、元マミさんの部屋なんだけどね。」
幸恵 「ふ〜ん。分かった、行くよ。」
翠  「詠さんも呼ぶけど、いいよね。」
幸恵 「うんいいよ、別に…」
 放課後、翠と幸恵は詠と合流して翠の新居へと向かった。
詠  「マミさんの部屋かぁ…久しぶりね。あっ御免なさい、今はあなたのお部屋よね。」
翠  「いいですよ、詠さん。私だってまだそう思ってますから。」
 そして一行はその建物の前に到着した。
幸恵 「ちょっ、嘘でしょ!翠、ここに住んでんの?」
翠  「うん。」
幸恵 「…」
 一行はコンシェルジュに見送られ、その高層階のコンドミニアムにやって来た。
翠  「さあ、入って。」
 中に入った幸恵はつかつかと部屋の奥まで進み、呆れるように窓から見える街を見下ろした。
翠  「今お茶入れますね。」
詠  「手伝うわ、これでも茶道部だったのよ。」
 観光客のように部屋の中を見回す幸恵をよそに、翠と詠は三角形のクリスタルテーブルの上にお茶の用意をし終えると席に着いた。
翠  「幸恵、そこに座って。」
 半口を開けた幸恵は言われるままに席に着くと、今度はテーブルや食器をまるで品定めでもするかのようにしげしげと見始めた。
翠  
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