第一部
第二章
第十六話『どうか完璧な魔法少女になって』
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そこを確保してくれていた。もっとも、出口を塞ぐようにしていた巨大魔獣が倒されると、他の魔獣達は統制が効かなくなったようにバラバラに動き、特にそこが激戦区になっていたわけではなかったのだが。
まどかが二人に叫ぶ。
まどか「二人とも、今すぐ結界から出て!」
そしてまどかとほむらは、二人でそのまま魔獣空間から離脱してしまった。
詠 「唯!私達もすぐに出ましょう。」
唯 「ああ…」
詠と唯も、それに続くように急いで結界から出て行った。
?
夜の公園はとても静かだった。一息ついた詠が、先に結界から出た二人に詳しい状況を聞こうとした時、背後から翠が出て来た。翠は矢を番え殺気を放っていた。
唯 「うわっ!」
その凄まじい殺気に気圧されて唯は跳ね退き、詠も後退りして翠に道を譲った。翠はまどかに矢を定めて歩み寄った。
ほむら「何なの翠、止めなさい。」
ほむらがそれを遮るようにまどかの前に出ると、まどかは更にそのほむらの横を回り込んで前に出て、文字通り矢面に立った。
まどか「ほむらちゃん、いいの。」
まどかは翠に近寄って行き、その矢の切っ先が胸に当たるように立つと、陽子の髪飾りを両手で掲げるようにして翠に差し出した。この時、翠は陽子の言葉を思い出していた。あのまどかに気を付けろと言う言葉を。
暫しの沈黙の後、弓を下ろした翠は奪い取るようにまどかからその髪飾りを受け取った。そして体を反転させてまどかに背を向けると、それを胸に抱いて目をつぶった。
事態の把握がままならない詠は、それでも今確かめておくべきだと思い、誰にと無く尋ねた。
詠 「陽子は…」
翠 「陽子は…円環の理に帰しました。」
詠は翠が答えた事は意外だったが、一つの提案もしくは結論を言うべきだと考えた。
詠 「暫くは、狩りを控えましょう。」
その意見にほむらは飛び付いた。
ほむら「そうね、こんな状況では被害が増すばかりだわ。今後は全面的に魔獣狩りを止めるべきよ。」
詠はそこまでは、と思いつつキュゥべえを探したが、こういう時に限って見当たらなかった。結局判断を翠にゆだねる。
詠 「翠、それでいいのかしら?」
翠は無言で目をつぶったまま小さく頷いた。
?
帰宅した翠は明かりも点けずに薄暗い部屋の真ん中で、手の平にある陽子の髪飾りを見つめながら佇んでいた。
陽子の最期の言葉が脳裏に響く。
どうか完璧な魔法少女になってね…
翠 「陽子…」
翠はその髪飾りをギュッと握り締めると瞼を強く閉じ、そこから一縷の涙を滴らせ呟いた。
翠 「なるよ、私…完璧な魔法少女に…」
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