第一部
第二章
第十二話『温かくって柔らかくって優しくって』
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りが欲しいだけなの。何か知ってる、気付いた事でいいからお話してくれない?」
詠 「そのサイト自体知りません。誰かが勝手に書き込んだんです、私じゃありません。」
詠は俯き震える声で押し出すように言った。後藤は身を乗り出し、抑えた声で諭すように話す。
後藤 「被害者の奥さんは妊娠中でね、子供も他に二人いるんだ。被害者の家族ってのはね、犯人が捕まるとホッとするんだよ。君は妊婦さんや幼い子供達を安心させてあげたいとは思わないかな。」
詠 「…。」
白石 「何でもいいのよ。どんな些細な事でも。」
詠は蚊の鳴くような声で、自分に言い聞かせるように言った。
詠 「私は何も知りません。」
それを聞くと後藤は身を引いて少し間を置き、思い出したように質問して来た。
後藤 「そう言えば君のお母さんから聞いたんだけど、その日は帰りが遅かったんだって?」
詠 「それは部活で…」
白石 「茶道部が終わった時刻とあなたが帰宅した時刻、だいぶ間があるわよね。真っ直ぐには帰っていないようねぇ。」
詠 「それは…」
後藤 「誰か友達と一緒にはいなかったのかい?」
詠 「別に…」
白石 「事件現場付近で二人組の女の子を見たって人がいるの。一人がもう一人を引っ張るように走っていたって。」
詠 「…。」
詠は俯いたまますっかり萎縮して小さく固まってしまった。それを見た警察の二人はどこか満足げに見合わせると、緊張を解いた感じに言った。
後藤 「うん、それじゃあ今日はこのぐらいにしておこうか。」
白石 「それでは詠ちゃん、何か思い出したらここに連絡してね。」
そう言って、詠の前に名刺を置いた。
後藤 「それでは先生、彼女は早退させてあげて下さい。もし宜しければ我々の車で自宅まで送り届けますが…」
固まって微動だにしない詠を見兼ねて担任はそれを断った。
女性教員の車で送られ家に帰ると、共働きの両親が詠を待ち構えていた。詠は両親から厳しい追及を受けた。謂われのない売春疑惑が中心だった。夜遅くになってやっと解放され、自室のベッドに倒れ込んだ。朝から何も食べていなかったが空腹感は全く無く、ただひたすらに徒労感のみがあった。泣く気力さえ生まれなかった。眠くもなく何か代位行為をする事も出来ず、樹木のように苦しみの風雪に耐えていると、突然フラッシュバックが起こり映像が頭に現れた。白い異世界に白い巨人、そして突如現れた一人の少女。詠は跳ね起きるとベッドに腰掛けて思いを巡らした。断片的で曖昧な記憶を手繰り寄せると、詠は独り言を呟いた。
詠 「あの人の着ていた制服…確か見滝原中の制服があんなだった筈だけど…」
?
朝、幸恵と詩織が登校してくると、校門の前に見滝原の制服ではない少女が誰かを待っているかのように佇んでいた。
幸
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