第一部
第一章
第八話『あなたの願いって何』
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、でもどうしてもお別れを言っておきたいお友達がいるのなら行ってらっしゃい。」
陽子はその言葉にそれ程驚かなかった。いつか近い内にやって来るであろうその日が遂に来た、という感じだった。季節が移ろうように自分が普通の子供でいられる時期が終わったのだ。
陽子 「うん、一人だけいるから学校に行って来る。」
母 「そう…」
陽子の母親は何だか安心したように大きく頷いた。
朝の通学路を陽子は翠を求めて走った。するとやはり小走りに急ぐ翠を見つけた。陽子はなんとか翠を捕まえて話をしようとした。
陽子 「おはよう翠ちゃん。」
翠 「あっ陽子おはよ。」
陽子 「あのね翠ちゃん、私大事な話があるの。聞いてくれる?」
翠 「ごめん陽子。今は、今日は駄目なの。明日もし私がまたあなたに逢えたなら、ちゃんと聞くから。ホントごめん。」
翠はそう言うと陽子を残して行ってしまった。陽子は翠が魔法少女として命懸けで戦っている事を知ってはいたが、明日が無いのは自分の方だったので、翠のその態度には酷く失望してしまった。陽子はそのまま通学路から外れ、街を彷徨った。
行く当ての無い陽子が人目を避けて辿り着いたのは、人気の無い高台にある小さな公園だった。ブランコに腰掛けてボーッとしていると、隣から何者かが話しかけてきた。
亮 「どうしたんだい、こんな時間にこんな場所で。」
陽子は驚きもせず見向きもせず、いつの間にか隣のブランコに立ち乗りしている亮に言い返した。
陽子 「あなたこそなんでここにいるの?学校とか行ってないの?」
亮は立ったままブランコを軽く漕ぎ出した。キュコキュコとブランコが鳴る。
亮 「僕はこの世界の人間じゃないからね。でも前は…いや前の前にはかな、見滝原中に通っていたよ。」
陽子 「前の前は同級生だったとか?」
亮はブランコから飛び降りると、陽子の前に立った。
亮 「それは無いよ。だって君は今のこの世界、まどか世界に於て鹿目まどかの代わりに発生したニューフェイスだからね。」
そう言われて初めて陽子は顔を上げ、亮の方を見た。
亮 「真実を知りたいかい?」
陽子はなぜかその真実を知る事に恐怖を感じた。理由は分からないが、それを知ってしまうと自分が自分でいられなくなる気がした。だが今の自分が一体何を失うというのか。自暴自棄同然の今の陽子には、その恐怖では好奇心を抑えられなかった。
陽子 「…知りたいよ。」
亮 「だよね。」
亮は少し満足げに笑みを浮かべ、ブランコの柵に腰を掛けた。
亮 「さて、何から話そうか…そうだ、前に魔法少女の話をしたよね。人知れず魔獣と戦う戦士達。君の友達の翠も、今やその魔法少女の一員だ。実はね、インキュベーターと契約をして魔法少女になる時に、願いを一つ叶えて貰えるんだ。」
陽子
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