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SECOND
第一部
第一章
第七話『この世の盾となり』
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戦っているとは言えなかった。魔獣の攻撃を辛うじて不様に躱し、全く通用しない矢をたまに放っているだけだった。その姿は猫にいたぶられる瀕死の鼠を連想させた。
翠  「誰か助けを呼ばないと…」
キュゥべえ「まあそれは無理だろうね。今から急いでこの結界を抜け出して何とか他の魔法少女に救援要請を出したとしても、それがここに到着するまでほむらが持つとは思えないよ。それに逐次的に魔法少女を投入していったら、それこそ全滅してしまうかもしれないじゃないか。それでも君は、ほむらの為に他の誰かに命を懸けろって言えるのかい?」
翠  「そんな…」
 魔獣の払った手にかすり、それだけで吹き飛ばされるほむら。地面に叩き付けられゴロゴロと転がった後、何とか立ち上がり効きもしない矢を番えた。
翠  「酷い!」
キュゥべえ「仕方ないよ、彼女一人では荷が重すぎた。」
翠  「そんな、あんまりだよ。こんなのってないよ。」
 キュゥべえは今にも泣き出しそうな翠の方に、体ごと向きを変えて言った。
キュゥべえ「諦めたらそれまでだ、でも君なら運命を変えられる。避けようの無い滅びも、嘆きも、全て君が覆せばいい。その為の力が君には備わっているんだから。」
 ほむらの絶望的な戦いも、いよいよ終局を迎えていた。ほむらはもう矢を放たなくなっていた。効かないので止めたのではない、矢を番える事すら出来なくなっていたのだ。高く跳び上がる事も無くなり、地面を這いずり回って魔獣の攻撃を凌ぐのがやっとだった。
 翠は拳を握り締め、勇気を掻き集めると決意して言った。
翠  「キュゥべえ、私は暁美先輩のように強い魔法少女になって彼女を助けたい。」
キュゥべえ「へぇ、ほむらって強いのかい?」
翠  「え!?」
 翠は腰を折られた。
キュゥべえ「まあほむらが強いとしても、もし君が今のほむらと同じ位の魔法少女になったとして、それで彼女が救えるのかなぁ。それに君は今のほむらを救う為だけに魔法少女になろうと言うのかい?」
翠  「それでは駄目なの?」
 キュゥべえは翠に背を向けるように、体ごと向きを変えて呟いた。
キュゥべえ「君にはもっと、上を目指して欲しいんだけどねぇ…」
 翠は考えた、魔法少女とは何かと。
 (魔獣から人々を守る正義のヒロイン?いや違う、そんな浮ついたものじゃない…)
 翠は魔法少女というものを必要以上に大仰に捉えていた。インキュベーターにしてみれば魔法少女なんてものは、大体椰子ザルみたいなものでしかなかった。人の感情というアストラルプレーン側のエネルギーをマテリアルサイドに持って来る一つのデバイスに過ぎないのだ。だからある意味、このインキュベーターのシステムは魔法少女達の勘違いによって成り立っている側面があった。そしてまた今ここでも、翠はインキュベーターにとって最も都合の良
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