第一部
第一章
第七話『この世の盾となり』
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なに見たかったほむらの笑顔、しかもそれは自分に向けられたもの。なのに少しも嬉しくはなかった。お別れだったからか?社交辞令の作り笑いだからか?トボトボとほむらのマンションから出て来た翠は、その足でマミの所へ向かいながら考えていた。
(何だろうかこの違和感は、虚しいのか寂しいのか…いや違う。ところで暁美先輩はどこへ行くのだろうか。狩りの為の事前集会にでも行くのだろうか?でもそしたら私の趣旨を理解して一緒に連れて行ってくるだろうし、第一それならマミさんの所へ行けなんて言うのはおかしい。マミさん抜きでの集会なんて考えられない。勿論個人的な要件ぐらいいくらでもあるのだろうけど。…そうだ、あの違和感の正体。それはあの時、私が暁美先輩の前からいなくなるんじゃなくて、まるで私の前から先輩がいなくなるみたいな感じだったからだ…)
翠は歩みを止めた。
(そういえば、キュゥべえはどこへ行ってしまったのだろうか?)
翠は急に胸騒ぎに襲われた。そして突如として廃工場に向かって走り出した。どうしてそこなのか分からなかったが、なぜか翠には確信があった。
?
件の廃工場に翠がやって来ると、その扉の鍵は開けられていた。翠がその扉に手を掛けると、鉄の扉はギイギイという音のみを抵抗としてすんなりと開いてしまった。覗き込むと建屋の中の螺旋階段はその暗闇にすぐに溶けて見えなくなっていたが、翠は意を決して中に入ると駆け足で階段を下り始めた。建屋の奥底から淡い光が立ち昇ってはいたが、視界は殆ど無いに等しかった。暗闇の中いつ果てるとも分からないその階段を、翠は一心不乱に駆け下りた。やがて周囲に変化が起こり、自分が異空間に入った事を翠は悟った。すると下の方から音が聞こえ始めた。誰かが魔獣と戦っている音だ。やがてその音がはっきりと聞こえて来るようになると、その階段は終わりを告げた。階段の終着した所の傍にキュゥべえがいた。
キュゥべえ「おや翠。どうしたんだい、こんな所に来るなんて。」
翠 「キュゥべえこそ…誰が戦っているの?」
キュゥべえ「暁美ほむらさ。そうだ、君にも見えるようにしてあげるよ。」
キュゥべえがそう言うと、翠の頭の中に突然その戦いのビジョンが飛び込んできた。
翠 「うっ?!」
しかし翠はその驚きに浸っている訳にはいかなかった。ほむらが苦戦しているからだ。
キュゥべえ「全く無茶な話だよね。この間、彼女を含む五人で戦っても勝てなかった相手を、今度は一人で倒そうだなんてさ。」
翠 「どうして暁美先輩は一人で戦っているの?」
キュゥべえ「さあ、僕にも彼女がなぜそうするのか理解出来ないよ。どうしても君がその訳を知りたいのなら、直接本人に聞くしかないのだろうね。もっともそんな事が実際出来るかどうか、かなり怪しいようだけどね。」
ほむらはもう
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