第一部
第一章
第七話『この世の盾となり』
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いよいよ翠の転校の時が迫った。焦り悩む彼女にキュゥべえが囁く。
キュゥべえ「翠、叶えたい望みがあるのなら僕が力になってあげられるよ。魔法少女になればマミやほむらのようにここで一人暮らしをする事も出来る。面倒な手続きも複雑な人間関係も困難な経済状態も、僕の方で何とかするよ。だからさあ、僕と契約して魔法少女になってよ。」
一陣の風が翠の心の中を吹き抜けた。甘い誘惑だった。両親への不満、知らない土地への不安、この街への愛着、一人暮らしへの期待、魔法少女への憧憬。しかしその一方、先日の廃工場での光景が頭に浮かんだ。消沈した四人と動く事の無い杏子。翠の心の中のほむらが詰問して来る。
あなたに本当に務まるの?
激しく葛藤する翠。そんな煮え切らない翠にキュゥべえは不意に言った。
キュゥべえ「どうやら君は、魔法少女になるべき人間ではないようだね。」
翠 「え?!」
翠は失望し、落胆した。何より自分自身に対して。
翠 「そうですか…すみません…」
キュゥべえ「君が謝る事ではないさ。と言うより、むしろ僕の方が謝るべき事なんだろうね。」
翠 「記憶…消されちゃうんですよね…」
キュゥべえ「うん、そうだね。でもその前に君もみんなとはお別れをしておきたいんじゃないのかな。まずはほむらの所に行くといい。さあ、付いておいで。」
キュゥべえは翠をほむらの住むマンションまで連れて来ると、部屋番号を教えて一人で行かせた。翠がほむらの部屋の前の廊下にやって来ると、ほむらは丁度どこかに出かけるところのようで、自分の部屋の扉に鍵を掛けていた。
翠 「暁美先輩!」
翠がほむらに呼び掛けると、ほむらは少し驚いたように翠の方を向いた。
ほむら「ん!翠?どうしてあなたがここに…」
翠 「突然ごめんなさい、暁美先輩。実は私、キュゥべえから魔法少女になるべきではないって言われてしまって。それで記憶を消される前に、ご迷惑をお掛けした魔法少女の皆さんにお別れをさせて貰っているんです。」
ほむら「えっ!あのキュゥべえが?」
ほむらは、今度ははっきり驚いてみせた。それはほむらにとってなかなか興味深い話ではあったが、今のほむらにはその好奇心よりももっと大切な優先事項があった。
ほむら「そう…でもそれはあなたにとっては良い事だと思うわ。」
そう言って表情を和らげると、ほむらは翠の方に近付いて行った。そして翠の手を取ってニッコリと笑顔を見せて言った。
ほむら「マミの所へお行きなさい。今の彼女なら、あなたを引き留めたりはしないでしょうから。」
翠 「はい、ありがとうございます。そうさせて頂きます。」
ほむら「じゃあ、元気でね。」
翠 「はい、暁美先輩もお元気で…」
そしてほむらは足早に去って行った。翠は生まれて初めてほむらの笑顔を見た。あん
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