第一部
第一章
第六話『廃工場の魔獣』
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めた。
杏子 「いるな…」
マミ 「そうね…みんな来るわよ、集中して。」
誰が指示するとなく、一行は軽く散った。そして暗闇の中からそれは現れた。
その姿を見たほむらは戦慄した。体中から血の気が引き、一瞬身動きが取れなくなった。もし廃工場の魔獣が最初にほむらを攻撃していたら、彼女はその一撃をよける事が出来ずに粉砕されていた事だろう。しかし幸運にも魔獣は比較的前に位置していたマミと杏子を狙ったので、ほむらはまだ生きていられた。ほむらは持てる気力の総てを費やして何とか体を動かすと、弓を撃ちながらその魔獣の周りを回りだした。口から言葉が漏れる。
ほむら「なんで?どうして?なぜお前がここにいる!」
そして矢継ぎ早に矢を射りながら、半ば半狂乱になって叫んだ。
ほむら「ワルプルギスの夜!」
その廃工場の魔獣は確かにワルプルギスの夜に似ていた。宙に浮いた歯車のような円盤の上に、ドレスコートを着たような女性的な姿は、明らかに他の魔獣と一線を画していた。もうほむらには作戦も何も無くなっていた。発狂したように無秩序に放たれる矢は、大いに味方を翻弄した。
マミ 「ほむら!ちょっと、どうしちゃったの!」
マミもほむらを止めたいが、暗闇と素早い魔獣に阻まれ、どうする事も出来なかった。ほむらのとばっちりは特に近接武器を使う杏子と真理が受けた。
杏子 「おい馬鹿野郎!そんな撃ち方されたらこっちが危ねえじゃねえかよ!」
この状況を受けて真理は後方の暗闇に退避してしまった。マミもほむらを追うのに気を取られ魔獣に手が回り切らない。投槍が武器の梨華は狙いを定められずにいた。一人前線に残された格好の杏子は、魔獣とほむらの弓矢との二重苦に苛まれていた。
杏子 「畜生、これじゃあ前の時よりひでーじゃねえかよ…」
そう悪態を吐く杏子ではあったが、実は命の危険はあまり感じてはいなかった。前の時もそうだったのだが、この廃工場の魔獣からは迫力というか殺気というか、そういったものが受け取れなかった。何だか、放っておいてくれと言って脅して来ているような、本気を感じさせない戦い方をしているような気がするのだ。
しかし傍から見ている梨華にはそんな杏子の余裕など知る由も無かった。恩人で大好きな杏子が大ピンチに陥っているのだ。
梨華 「杏子さん!」
梨華は叫ぶと、不用意に魔獣の近くにいる杏子の許へ寄って来た。
杏子 「わっ、馬鹿!今こっち来んじゃねえ!」
魔獣がその手で水平に薙ぎ払って来た。杏子は跳び上がって躱すつもりだったが、魔獣の手の軌道上に梨華が現れたので咄嗟に梨華を突き飛ばしに行った。しかし少し間に合わなかった。
杏子 「梨華、約束覚えてんな。」
そう言って、杏子はクッションになるように梨華を抱きかかえ、魔獣の手に撥ね飛ばされた。二人は一丸となって暗闇
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