第一部
第一章
第六話『廃工場の魔獣』
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確かにほむらが魔獣に襲われた事は無い。もっとも遠い昔に魔女に襲われた事が一度だけあったが。しかしそんな大昔の経験を思い起こすまでもなく、ほむらはこの感覚に似たものを知っていた。前の世界の魔女の結界の中に入って行く感触にこれは酷似していた。
幽かに見える周囲の物が徐々に変化していった。打ちっぱなしのコンクリートのようだった壁は古い日本家屋の漆喰で塗られた土塀のように、鉄で出来た階段は手摺りを失い角の丸い石段のように変わって行った。やがて下の方から射していた光は無くなり、代わりに全体的に薄暗い感じになった。ただし反対側の壁が見える程ではなく、視界は20mあるかどうかといったところで、相変わらず周囲の大半は闇であった。
沈黙に耐えかねたのか、なんとなく杏子がマミに話し掛ける。
杏子 「そういやぁ、前ん時も五人だったよな。」
マミ 「そうだったわね。あの三人は今どうしているのかしら…」
杏子 「それなりの奴らだったからな、まあ元気にしてんじゃねえの。…そうそう、恵にはあの後一回会ったぜ。」
マミ 「ああ、岬恵(みさき めぐみ)さんね。確か彼女、あちこち転属して回るのが趣味だなんて言ってたわね。何だか懐かしいわ…」
どんな物事にも終わりはやって来る。やがて無限に続くのではないかと不安を与えていたその階段は終着に達し、一行は底と思われる平らな砂地に辿り着いた。
杏子 「前と変わってねえみてえだな。」
マミ 「そうね…」
杏子 「ああそうそう、言い忘れてたけどよ。ここは空間が歪んでんだか、ただ単にそういう造りなんだか分かんねえけど、上の建屋の大きさよりずっと広くなってっから気い付けてくれよな。」
梨華 「そういえば、その魔獣って大きいんですか?」
杏子 「前と同じなら、それ程でかい方の奴じゃねえんだけどな。」
真理 「大きさは変わるものなのかね?」
杏子 「分かんねえよ、私だってこれで二回目なんだから。でもとにかく変わった奴だぜ、宙に浮いてて形も変なんだ。」
真理 「もう少し事前情報はないのかね。あと有効な作戦とか?」
マミ 「ごめんなさい御悟さん、私達もそんなによく知っている訳ではないの。たぶん今口で説明するより、実物を一見した方が分かると思うわ。あと作戦なんだけど、キュゥべえが言うにはあなたなら倒せるらしいの。だから私達四人で何とか動きを止めて、トドメを御悟さんに刺して貰うっていうぐらいなんだけど、どうかしら。」
真理にとっては最高の作戦だ。
真理 「私から異存は無いがね…ほむら辺りはどうなんだい?」
ほむら「私も構わないわ。」
各自が目配せをして確認すると、一行は意を決し廃工場の魔獣へと暗闇の中に進んで行った。すぐに後ろの壁も見えなくなり、一行は闇に囲まれながら進行していった。
程なくして、全員がピタッと足を止
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