第一部
第一章
第五話『特別な魔法少女』
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お願いするわ。」
キュゥべえは適当な場所を見繕って、麗子を魔獣空間に招き入れた。そこには小さな魔獣が数匹いるだけだった。
逃げ惑うその小さな魔獣達を、麗子がモーニングスターの鉄球を振り回しながら追い立てた。その姿をキュゥべえはぼんやりと見ていたが、突然この時間には滅多に出て来ない筈の大きさの魔獣が出現すると、すぐに麗子の許に駆け寄って行った。
キュゥべえ「麗子!大きな魔獣が現れたんだ。さあ、すぐにこの結界から出よう。」
しかし、丁度小さな魔獣を一体葬って意気盛んになっていた麗子は、その忠告を聞かなかった。
麗子 「キュゥべえさん。大きいと言っても、昨日他の皆さんが倒していた魔獣に比べると、全く大した事は無いように見えますよ。それに大分コツを掴んで来ましたので、私でもあれ位なら何とかなりましてよ。」
標準的な魔獣は10〜15m位の大きさだが、その魔獣は4〜5m程でしかなかった。確かに普通の魔法少女にとっては大した事は無いのだが…
不用意に飛び掛かって行った麗子を、その魔獣はいともあっさり撥ね退けた。宙を舞った麗子は丁度キュゥべえの近くに落ちて来た。瀕死の麗子はキュゥべえに尋ねた。
麗子 「キュ…キュゥべえ…わ、私は特別な魔法少女なのでは…なかったのですか…」
キュゥべえ「とんでもないよ、麗子。君みたいに弱い魔法少女を僕は見た事が無いよ。君は本当に特別に弱い最弱の魔法少女として僕の記憶の中に残り続けるだろうね。」
麗子 「そんなの…嫌…」
麗子は一縷の涙を落とし、絶命した。
?
マミは麗子の部屋の前にやって来た。いくら呼び鈴を押しても返事が無いので、試しにノブを掴んでみると鍵は掛かっていなかった。扉を開けて中に入りながらマミは言った。
マミ 「麗子、いないの?私、御夕飯作って持って来たの。一緒に食べましょう…」
しかし麗子はおらず、部屋の真ん中にキュゥべえが座っていた。
キュゥべえ「ああ、マミ。実は、麗子がどうしてもって言うから魔獣空間に連れて行ってあげたんだ。そしたら小型の魔獣に一撃でやられてしまってね。勿論僕は止めたんだけど彼女が勝手に…」
バタン!
マミはキュゥべえの話を聞き終わる前に、部屋を出て行った。
?
日富邸の何も無い空き部屋に、落ちかけた日の光が射し込んでいた。そこには日富家の長男が佇んでいた。その姿を見つけた二人の弟も兄の許へと吸い寄せられた。
次兄 「兄さん、何をしているんだい?」
長兄 「ああ…。こんな事を言うと、どうかしたのかと思われるかもしれないのだが…」
長兄はその空き部屋を、愛惜しそうに見回しながら続けた。
長兄 「俺はこの部屋に我々家族にとって、何かとんでもないくらいに大切なものが、あったような気がしてならないんだ。」
末
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