第一部
第一章
第四話『高尚な我が願い』
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ると不思議そうに体中を撫で回した後、口に手を当てて考え込むような仕草を見せた。
そして唐突に、
真理 「こうか?」
と言って、右手を頭上に掲げて指を鳴らした。すると鳴らした指の辺りから光の粒子が湧き起こり、しだれ花火のように真理の全身に降り注いだ。
その光の粒子が消え去ると、後に残った真理の姿は一変していた。白い襟の大きな外套のようなものを羽織り、黒のタイトスカートを履いているようだった。そして何よりも違う点は、その左手に大きな鎌を携えている事だった。
真理は最初不思議そうに、しかしすぐに楽しそうに、その鎌を振り回した。その様子を見届けるとキュゥべえはマミの許へとやって来て言った。
キュゥべえ「提案があるんだ、マミ。」
マミ 「何?」
キュゥべえ「廃工場の魔獣に、挑戦してみないかい?」
マミ 「あの大鎌の子なら倒せるというの?」
キュゥべえ「まあ、理論上はね。」
マミはほむらと杏子の方を見た。二人はじっと真理を観察しているようだった。マミは少し考えてから答えた。
マミ 「止めておくわ。連帯に不安があるから…」
キュゥべえは一度尻尾を振ってからニッコリ笑ったような顔をして言った。
キュゥべえ「やはり君は賢明だね。」
?
西洋風の豪華な広い部屋の中で、長細い大きなテーブルを囲って日富家の一父三男一女が食事をしていた。
父 「麗子、学校は楽しいか?」
麗子は内心うんざりしていた。
麗子 「はい、お父様。」
父 「うむ。」
麗子の父は満足した。続けて兄達が口を開いた。
末兄 「せめて麗子には市井の学園生活を楽しんで送って貰わなくてはね。」
次兄 「そうだね。第一、兄弟の中に誰も青春を謳歌した人間がいないなんて惨めじゃないか。」
長兄 「それに、そこで養われる普通の感覚は、我ら一族にとっては大きな財産となりうるであろうからな。」
麗子 「はい、お兄様方…」
麗子はどうにか食事をし終えると、そそくさと逃げるように自室に駆け込んだ。そして鏡台の前に座ると呟いた。
麗子 「どうせ、私が女だから…」
麗子は自分が女だから何も期待されず、無難に学生生活を送らせた後は何処かに嫁がせればいいと父や兄は考えているのだと思っていた。実際はそうではなかったが、思考の袋小路に入り込んでしまえば何もかもがそうであるように見えてしまう。
麗子の母親は彼女を産んで死んでしまった。母を愛していた父は再婚しなかった。そんな父とまだ幼かった兄達から母を奪ったのは自分だという負い目があった。だから物心ついた頃から良い子にして来た。
だがそれは歪な事だった。疎外感に苛まれ懐疑心に囚われた。ありもしない妄想の魔獣が彼女の心の中で生まれ、勝手なストーリーを創り出して暴れ回っていた。
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