第一部
第一章
第三話『私達はもうお友達』
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朝の見滝原中学校。掲示板の前には人だかりが出来ていた。中間テストの成績順位表が張り出されていたからだ。その中に一年生の葉恒翠と、同じクラスの空納陽子がいた。二人はあまり芳しくない自分たちの成績にやや落胆の色を見せていた。そのすぐ近くには二人のクラスメイトの鳴子幸恵(なるこ さちえ)と真麻詩織(まあさ しおり)がいた。詩織は十番台の幸恵を称えていたが、当の幸恵の表情は暗かった。掲示板の前から翠が立ち去ろうとした時、陽子が口を開いた。
陽子 「あっ、またあの人達がトップだ。」
翠 「え?」
陽子 「ほら、二年と三年のとこ。私が知る限りいつもあの二人が一番だよ。」
翠 「あの三年の人って、この間の?」
陽子 「そうだよ、あの人。」
そう言われて翠が上級生の成績表を見ると、二年の一位には暁美ほむら、三年の一位には巴マミと書かれていた。その暁美ほむらの名を、睨み付ける眼差しがあった。その眼差しの主の名前はほむらのすぐ下に書かれていて、御悟真理(みさと まり)と記されていた。また巴マミの名を三年生の日富麗子(ひとみ れいこ)が遠目から眺めていた。そしてそれらの後ろを、雑多を避けるように暁美ほむらが足早に通り過ぎて行った。
ほむらが玄関に着き自分の下駄箱を開けると、そこには一通の手紙が入っていた。
?
体育の時間、翠と陽子がランニングの後で息を整えていると、二年生が走り高跳びをしている光景が見えた。すると陽子が翠に話し掛けて来た。
陽子 「ほら、翠。今、丁度跳ぼうとしてる人、あの人が暁美ほむらさんだよ。」
翠が見やると、ほむらが華麗に背面跳びを決めて見せた所だった。ほむらの同級生達は感嘆の声を上げていた。ただその中にいた真理だけは、何も言わずじっとほむらを観察していたのだが。
陽子 「暁美先輩って、勉強だけじゃなくってスポーツも万能なんだって。」
翠 「ふーん、凄い人なんだね。」
翠はほむらを少し意識した。
?
学校の帰り道で翠と陽子は互いの不幸話をした。
翠 「いよいよさ、私のパパとママ、離婚しちゃうみたいなんだよね。」
陽子 「そう…私の家もパパの事業が上手く行ってなくってさ…最近生活が苦しいんだ…」
翠 「えっ、大丈夫なの?見滝原って結構学費高いでしょ。」
陽子 「うん…授業料は一括で一年分収めているから、たぶん大丈夫だと思うんだけど…」
陽子はそれきり黙ってしまった。翠も何と言っていいのか分からず、気不味い沈黙だけが流れた。
陽子 「じゃあ。」
翠 「うん、じゃあ…」
陽子と別れて翠が帰宅すると、翠の母親が慌ただしく家の整理をしていた。
翠 「ただいま…」
母親 「あっ、翠。大事な話があるから聞きなさい。ママねぇ、パパと正式に離婚したの。それでね、翠
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