第一部
第一章
第三話『私達はもうお友達』
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然の事だが不快に思ったほむらは、翠の方に顔を向けずに目だけを配せ、可能な限りに嫌悪感を乗せて言葉を発した。
ほむら「何か?」
しかし当の翠には全くその意図は伝わらず、むしろ話し掛けられた事に喜びを与えるのみであった。
翠 「あの…有り難う御座います、助けて下さって。」
ほむら「別に…」
ほむらは恣意的に視線を前に戻しあまり相手をしたくない、これ以上話し掛けないで♀エを全開にしてみた。しかし翠は靴に付いたガムのようにほむらに纏わり付いて来る。
翠 「あの、あの…さっきの事だけじゃないんです。今日のお昼休みの時にも暁美先輩に助けて頂いたんです。実際に助けて貰ったのは私じゃなくって陽子って子の方なんですけど…その、覚えていらっしゃいませんか?」
それは、翠にとっては自分とほむらを結びつける素敵なイベントの一つであるのだろうが、ほむらにしてみれば余計な手間を掛けさせられた迷惑な出来事でしかなかった。大体、友達を救おうともせず傍観を決め込んでいる人間など、今のほむらにとっては軽蔑と嫌悪の対象でしかなかった。そういった弱い人間を見ていると、かつての何も出来なかった自分の姿を突き付けられているような気がして嫌なのだ。
ほむらの苛立ちが頂点へと達し、辛辣な罵詈雑言を放つべくその顔が翠へと向けられた。しかしそれを見た翠は、無邪気にもやっとほむらが自分の方を向いてくれたと、安堵の念を抱いてすらいた。
今まさに、ほむらの口から悪態が放たれようとしたその時、
マミ 「お待たせー。」
と、マミがお茶とケーキを持って現れた。マミはまるで全てを見透かしたようにほむらの前にカップを置くと、じっとほむらに目を合わせて言った。
マミ 「アールグレイはイライラした心を落ち着かせてくれるのよー。」
そしてニコッと一笑顔を入れてからお茶を注いだ。それでほむらはすっかり機先を制されてしまい、何も言う気がしなくなった。
マミ 「えーと、葉恒さんでしたよね。どうぞ、召し上がれ。」
マミはケーキを翠の前に置きながらニッコリと笑って見せた。
翠 「あっ、有り難う御座います。おっ、お高そうなおケーキですね。」
翠は舞い上がってしまい言葉が少し変になったが、マミは優しくフォローしてくれた。
マミ 「まあ、お高そうだなんてありがとう。これは私が作った物なのよ。」
ほむら「へっ!?」
ほむらは思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。マミはそんなほむらの方をチラリと見てから、誰に言うとなく続けた。
マミ 「私の両親はね、二人ともパティシエだったの。だから私も何となくなんだけど、少しでもあの両親に近付けたらなぁって、自分でケーキを作るようになったのよ。」
翠 「ごっ、御両親は、今は…」
翠はつい反射的に聞いてしまったが、すぐに後悔した。文脈から不幸
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