第一部
第一章
第三話『私達はもうお友達』
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んだか喜びが込み上がって来た。
翠 「他人に勇気の強要をする気は無いけど、もし友情が欠片でも有るのなら、出て来て共にいておあげなさい。」
それは自分が指摘された言葉だったが、妙に楽しく思えた。そして鏡の前に行くと、体を曲げて上半身を出来るだけ水平にした。
翠 「御免なさい。」
そう言って、暫くそのままの姿勢を保った。
すると翠は突然笑い出し、ベッドに再び身を投げ出すと、転げ回りながら言った。
翠 「クーッ、このペッコリ感がまた…なんと言うか、振り慣れてる感全開でぇ…あーもー、暁美先輩ってば、一体何人の男子の枕を涙で濡らして来た事やら。」
そんな上気した翠に冷水が掛けられた。部屋の戸が強く叩かれ、母親の声が響いた。
母親 「翠、ちょっと郵便出して来てちょうだい。ここ置いとくから、今すぐ急いで行って来て。ママ、夕飯の支度があるから早くしてね。」
翠はイラっとした。いい気分を台無しにされた事や母親の性急な物言いもそうだったが、何よりも親の勝手で自分が転居転校を強いられている事が今の自分の不満の大根底であるのに、その事に対しての配慮が見受けられない点が翠には許せなかった。
それでも翠は言い付けを守るべく部屋を出た。部屋の前に置かれていた郵便物は思いのほか大きくて重いものだった。翠はその上に置かれているお金を無造作にポケットに突っ込むと、その段ボール箱を何とか持ち上げて郵便局へと向かって行った。
荷物を出して帰る頃には日がすっかり暮れて夜になっていた。役目も荷物も無くなり空虚な気持ちで歩いていると、再びイライラが心の中で沸き起こった。両親への不満やこれからの生活への不安が、次々と翠の心の中に湧いて出だ。
翠 「ママもパパも勝手すぎだよ…」
ブツブツと不平不満を口にしながら歩く翠の周りから、徐々に色が失われていった。地面も周りの建物も、白い石のような姿に変わって行った。だが翠は怒りに埋没してそれに気付けない。そして翠の周辺が全くの別世界に変わり果てた後、やっと彼女は辺りの異変に気付いて立ち止った。
翠 「ここは…どこ?」
?
そこは真っ白い砂地のような地面に、やはり真っ白な石灰岩のようなもので出来ている塔が幾つも建っている所だった。
翠は思った。
(私は夢でも見ているのだろうか?でも夢って感じじゃない。ひょっとして自分は交通事故にでもあって、臨死体験というものでも今しているのだろうか…)
すると、前方の少し離れた所にある一際大きな塔の陰から、何やら人のような形をしたものが現れた。
それは何か僧侶を思わせる姿をしており、やはり体も着ている物も真っ白だった。その白い僧はゆっくりと、しかし真っ直ぐに、翠の方に歩み寄って来た。
近付くに連れてその僧のようなものが、いかに巨大であるかが判
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