第一部
第一章
第三話『私達はもうお友達』
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場面に出くわしてしまう。
そこにはほむらと三年生と思しき男子が相対していた。しかし二人は互いに目線を合わせないようにしていた。
男子 「手紙、読んでくれたんだ。…有り難う。」
ほむら「あの、私…今は恋愛とかちょっと…」
男子 「うん、その辺は僕も理解しているつもりなんだ。何か目指すものがきっとあるんだろうなって。だから人知れず物凄い努力をしているんだと思う。そういう所に尊敬の念すら抱いているんだ。」
体育館の角の柱の際から、本当に微かに状況が窺い知れるギリギリの所で、翠と陽子は全神経を集中させて様子を窺っていた。
その男子は一呼吸し、そして続けた。
男子 「だから、その…待たせてくれないかな、君の心の待合室で…」
暫しの沈黙が流れた。翠と陽子は自分の心音で二人に気付かれるのではないかと思うぐらいドキドキしていた。
するとほむらは突然上半身を前に折り、ほぼ水平の状態にして言った。
ほむら「御免なさい。」
その姿は平身低頭の権化のようであり、ひらがなのつ≠フ字と言うよりカタカナのフ≠フ字に近かった。発せられた言葉と共に謝罪の意味である筈のそれは、まるでありとあらゆるものを拒絶する鉄壁の要塞の体をなしていた。
その男子は俯き僅かに震えながら、ほぼ涙声の弱々しい声を辛うじて絞り出した。
男子 「いや…僕の…方こそ…ごめん…ね…」
そしてそのままほむらの横を走り抜け、翠と陽子の前を通り過ぎて行った。
翠と陽子は、なぜか暫らく壁に張り付くように横歩きをして来た道を引き返すと、逃げるようにその場を後にした。
充分に離れたであろう所まで来てから、陽子は翠に言った。
陽子 「あれ、サッカー部の坂本先輩だったよ。」
翠 「えっ!坂本先輩って、あの?他校にまでファンクラブがあって、よくその先輩目当てにうちの学校のフェンスに噛り付いている女子がいるっていう、あの人?」
陽子 「うん、間違いないよ。あの坂本さんだった。」
その時、翠の中で何かが弾けた。
?
翠 「ただいま…」
そう言って玄関の扉を開けると、翠は暗い気持ちになった。家内の景色は着々と変化し、段ボール箱やビニール袋が目立つようになっていた。家に上がると声がした。
母親 「ああ、翠。あんたも荷物の整理、ちゃんとしておくんだよ。」
翠はその声を振り切って自室に逃げ込むと、鞄を床に落としてベッドの上に身を投げ出した。暫らく突っ伏した後、ゴロリと転がって仰向けになると、重たい気分を振り払う為にほむらの事を考える事にした。
翠 「暁美先輩ってカッコいいなぁ…」
そう呟くとすっくと立ち上がり、今日見たほむらを演じ始めた。
まずは腕を組んでおもむろに言った。
翠 「つまらないわね。」
翠は得意げに言い放ってみると、な
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