第一部
第一章
第三話『私達はもうお友達』
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ていたのだ。翠がとても見ていられないと振り返ると、そこには険しげな顔をしたほむらが立っていた。思わず声を上げそうになった翠が辛うじて両手で口を塞いで凌いだその横を、ほむらはすり抜けるように進み、そのまま三人の前につかつかと歩み出るとおもむろに腕を組んで言った。
ほむら「つまらないわね。」
幸恵と詩織は突然のほむらの出現に一瞬驚きひるんだが、幸恵はすぐに突っぱねた。
幸恵 「あなたには関係無いでしょ。」
ほむらに食って掛かろうとする幸恵に、詩織が耳打ちする。
詩織 「幸恵、この人二年生の学年一位の暁美ほむらさんだよ。」
幸恵 「えっ!この人が…」
幸恵はほむらの方をじっと見つめると、急に神妙な面持ちになった。
幸恵 「詩織、行きましょ。」
そして幸恵と詩織はそそくさとその場所から立ち去って行った。残された格好になった陽子はまだ固まっていた。ほむらは陽子の手の平の上にある御飯をそのラップで包み、持ち上げて縛ると言った。
ほむら「これはもう諦めなさい。」
そしてそれを陽子の横に置くと、ポケットから学食の食券を取り出して陽子の手の平に置いてそれを握らせた。陽子は辛うじて目線を上げると、ほむらにお礼を言おうと口を開けたが声は出なかった。ほむらは軽く頷くと、どこに向かってとなく言った。
ほむら「他人に勇気の強要をする気は無いけど、もし友情が欠片でも有るのなら、出て来て共にいておあげなさい。」
そう言うと、すぐにほむらはその場を去って行った。
ほむらがいなくなると、翠が申し訳なさそうに陽子の前に出て来た。
翠 「陽子、御免。」
翠は手を合わせて謝った。陽子は翠の登場にようやく動けるようになって立ち上がると、蚊の鳴くような声で翠に言った。
陽子 「有り難う、翠。」
?
まだ昼休みの時間は充分にあった。
翠 「せっかくだから、それ使わして貰お。」
共に陽子の埃を払っていた翠はそう言うと、陽子の手を取って引っ張った。だが陽子はそれに抵抗するように引っ張り返した。思わず振り返る翠に陽子はまずラップの御飯を取って見せ、そして言った。
陽子 「そっち、嫌…」
確かに翠が行こうとした方は学食への近道だったが、幸恵達が立ち去った方角でもあった。だが学食に行くのなら後は反対側からぐるりと回って行くぐらいしか無い。しかしそちら側だと今度はほむらの立ち去った方になる。どちらにしろ、このすぐのタイミングでの再会はバツが悪い気がした。
陽子 「こっちから行こ…」
翠 「う〜ん、でも暁美先輩がいるかも知れないし…」
陽子 「そしたら今度はちゃんとお礼言う…」
翠 「…そうだね。そうしよう。」
そして二人はほむらの向かった方へと歩き出すのだが、そんな二人はとてもお礼を言うなんて出来ない、とんでもない
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