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SECOND
第一部
第一章
第二話『人魚姫なんて大嫌いなのに・・・』
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だい?」
杏子 「はは、ちょっと無理だとは思うんだけどさ…今日の日暮れ頃、志築仁美と上条恭介の二人が行くっていうホールってのがどこかって…分かる訳ねえよな…」
 キュゥべえは尻尾をくるりと回した。
キュゥべえ「ふ〜ん、それは奇遇だね。杏子、それなら分かるよ。」
杏子 「えーっ!ホントかよ、キュゥべえ。さすがだなぁ、おい。じゃあ、教えてくれよ。」
キュゥべえ「勿論、いいとも…」

  ?

 杏子はそのホールへと走った。既に日が落ちて辺りは暗くなって来ていた。そこは市民会館と思しき場所で、その時は特に警備なども無く、杏子は中へとすんなり入れた。
 杏子は、ある開かれた扉の奥からバイオリンの音が聞こえて来たので、その扉の中へと進んで行った。するとそこには、ステージに立って黒いグランドピアノの隣でバイオリンを弾く恭介がいた。杏子は恭介に声を掛けた。
杏子 「あのよー…ちょっといいかな。」
 恭介は不意の登場に驚きながらも、バイオリンを下ろして杏子の方を向いた。
恭介 「何でしょうか?」
杏子 「あのさー…さやかの事なんだけど…」
恭介 「えっ!?さやか…それで?」
杏子 「ちょっと…っていうか、かなり信じられねえ事言うけどさ、聞いてくれっかな…」
 杏子は恭介が、見ず知らずの自分が突拍子も無い事を突然に言うのを聞いてくれるか不安だったが、恭介が自分の事を真剣な眼差しで見てくれていたので続ける事にした。
杏子 「実はさ、あんたの体が治ったのってさやかのおかげなんだよ。嘘じゃねえんだ。上手く言えねーけどさ、さやかが自分を犠牲にして奇跡を起こして治したんだよ。ホントだぜ。信じてくれっかな?」
 さすがに無理かと杏子は思ったが、恭介は答えた。
恭介 「そうか…やっぱりそうなんだね…僕も変だと思っていたんだ。医者から急に治ってるって言われるし、自分でも不思議なくらいの出来事だった。でもそう言われると合点がいくよ。前にさやかが言ってたんだ、奇跡も魔法もあるんだって。その意味が今、分かった気がするよ。」
 想像を超える恭介の理解っぷりに、却って杏子の方が面喰ってしまったが、それでも真意が通じた事に杏子は歓喜した。
杏子 「そうか、分かってくれんのかよ。ホントに良かったぜ。それでよー、実はこっからが本題なんだけどよ。その…おめーさんはあの仁美って奴の事は…どう思ってんだ?」
恭介 「…仁美さんにも良くして貰っているんだよ。僕の為にこのホールを用意してくれたしね。彼女の好意に甘えてしまっている自分が情けないとも思ってはいるけど、バイオリンは僕の人生そのものなんだ。だから…」
杏子 「そうか…まあそりゃあ、自分の人生は大切だよな。だけどさ、何つーか…おめーさんはよー、さやかの事好きか?」
 そのストレートな質問に、恭介は顔を赤らめ
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