第75話それでもキミは引き金を引けるか
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分からない。それを考えている時ーーー数十分前に恐怖に身を震わせていた彼を思い出した。そしてそれと同時にーーー
(あいつが私に似ているから・・・?)
怯えた彼を見た瞬間に、現実の自分が重なって見えたことを思い出した。彼女にも恐れる物がない訳ではない。そしてそれは、彼とよく似ているのだろう。
彼女はこの戦いとは無関係だと判断した思考を振り払い、前を見た。その視界に広がった光景は、狙撃手の彼女にとって驚愕する物だった。彼女は《ヘカートU》のスコープを調節して、対戦相手である彼をーーー腰に光の刀を吊るす女性になった少年、ライリュウの姿を見つける。だがその彼は、転倒した車体などの物陰に隠れるような行動を見せずにーーー堂々と歩いて来ていた。
(私の狙撃なんかいつでもかわせるってこと・・・!?)
彼は彼女の戦闘スタイルを知らない訳ではない。ずっと、ずっとモニター越しで見ていたのだから。だとしたら自分の狙撃など簡単に回避が可能だと、自分を見下しているのだと彼女は思い込んでしまう。だがそれは大きな間違いだと気付く。何故なら彼は、彼女の狙撃をーーー
(かわす気がない・・・!?)
回避もせずに、正面から狙撃を受けるつもりでいる。彼はある程度近付いたところで、立ち止まる。彼のその行動が彼女の逆鱗に触れた。彼女の目に見える、銃撃を当てるこの世界の力、《着弾予測円》が怒りによって強まった心臓の鼓動によって拡大と縮小を繰り返す。引き金にに触れる指に力が込められ、ついに彼女の、シノンの怒りがーーー頂点に達した。
「ふざけないでよ!!!」
シノンが怒号と共に発した銃弾が彼女の身を隠すバスのフロントガラスを破壊しーーーライリュウの後ろに転倒している乗用車に着弾して、大爆発を起こす。それでもライリュウは微動だにせず、平然とした顔で立っている。シノンはまだまだ冷静になることなど出来ずに、狙撃では見ることなど出来ない程に乱射する。一発はライリュウの足下から少し後ろに、もう一発はその反対側に。さらに三回引き金を引くが、全てが彼の顔の横を通りすぎる。冷静さを取り戻さない限り、彼女の放った銃弾は当たらない。
シノンはとうとう狙撃ポイントから離れ、彼の前に立ち止まる。
「何でよ?私との勝負なんてどうでもいいって言うの!?」
「・・・オレの目的は、明日の本選に出ることだ。これ以上戦う理由がない」
「ならその銃で自分を撃てばいいじゃない!弾代が惜しかったの!?それとも、わざと撃たれればそれで私が満足するとでも思ったの!?」
二人は面と向かって口論し始めた。ライリュウの目的は、今決勝に出場している時点で達成された。だったら彼が左腰に携えた拳銃で頭を撃ち抜けばいい。そうしないということは、ライリュウは
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