第三十五話 母と娘
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犯Aは、いきなり殺気を向けられ混乱した。ちなみに誘拐犯Bは精神切れで気絶したままだ。
「お前がカトレアに家出するように吹き込んだのかと聞いている」
誘拐犯Aは、冷や汗をだらだら垂らしながら、どう取り繕うか考えた。
(このままでは殺される…・・・!)
考え抜いた末に誘拐犯Aは、カリーヌ夫人に土下座して釈明する事にした。
逃げても追い付かれるだろうし、下手に抵抗しても返り討ちに遭う事は先ほどの戦闘で容易に想像できた。
「実はその事についてですが……」
誘拐犯Aは土下座して事の成り行きを説明した。
「……で。カトレアの言うままに今まで供をしていたと?」
「そ、そのとおりでございます。マダム」
「お前にマダムと言われる筋合いは無い」
低い声でカリーヌ夫人は言った。
「あ、いや、その……どうか命ばかりはご勘弁を」
土下座した状態の誘拐犯Aは、額を地面にこすり付ける様に謝った。
「……フン、何処の木っ端貴族かは知らんが命だけは助けてやろう」
「あ、ありがとうございます!」
カリーヌ夫人は路上の石ころを見るように誘拐犯Aを見ると、指笛を吹いて自分のマンティコアを呼び気絶したカトレアをマンティコアの背に乗せた。
「お、お待ち下さい! 御嬢……」
「御嬢?」
「いえ、カトレア殿を連れ戻すのは、どうか、どうかご勘弁願います! カトレア殿は王子に会いたい一心で、禁を破りここまでやって来たのです。どうか彼女の気持ちを汲んでください。それに……」
「それに? ……続けなさい」
誘拐犯Aは、言うか言うまいか迷ったが、結局言う事にした。
「はい、実は我々と出会ったとき、カトレア殿は森の中で泣いていました」
「泣いていた? カトレアが?」
「はい、このまま有無を言わさず連れ帰るのは余りにも可哀想です。どうか彼女の願いをお聞き届けを……」
「……」
カリーヌ夫人は沈黙した。
カリーヌ夫人の様子を伺っていると、誘拐犯Aの両隣に気配を感じた。
「お前達……!」
気配の正体はお供の狼達だった。
2頭の狼は『伏せ』をした。どうやら土下座のつもりらしい。
狼達だけではない。穴の中に非難していた動物達も恩を返そうというのか、誘拐犯Aの周りに集まり懇願する様にジッとカリーヌ夫人を見た。
「……ふぅ」
カリーヌ夫人はため息をつき、空を見上げた。
「どうやら時間切れのようだ」
そのセリフの後、5騎の軽竜騎兵がカリーヌ夫人らの上空を通過し、再び舞い戻って照明弾を投下した。
軽竜騎兵とは風竜にスピード重視の為に軽装のメイジを乗せた竜騎兵で、主に遊撃や追撃、偵察などが任務だ。
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