第n+3話 あそこにいるおっさんの見る主人公
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二会手 夏雄は、バーチャル賭け書道のログインボーナスを使って、暇つぶしに大穴を狙っていた。
夏雄が異世界に落ちた時すぐ近くにあったのがゲームセンターだったので、興味本位で入ってみたところみんながバーチャル書道に熱狂していた。
旅の恥はかき捨てと観客から参加者になる方法を探して、初めての人でも少しだけ無料で賭けられるということを知った。
観客が熱狂する中なんか迫力のある筆の動きをぼおっと見ながら、夏雄は最近誕生日プレゼントにもらった新品の万能翻訳伊達コンタクトレンズでゲームコインを円に換算して大穴が当たったら何を買おうかなんてキャッキャとぼんやり妄想していた。
そして当たった。倍率は92,65。初心者応援ブーストで多めにもらえることも含め、はしたログインボーナスでも大金になる。車は買えないが。
それから他の大穴を当てた人達と一緒に熱狂する参加者や観客の中なんやかんやとインタビューして、終わってゲームセンターを満足気に出ると、金の使い道の大部分は決まっていた。
「お金が集まる現場に立てるのって、なんかいいわよね」
「そうか?」
夏雄は日頃奢られっぱなしだった侍乃公他 美都子を高級レストランに誘った。美都子は示し合わせたようにセレブチックな服装だったので、自分の分のそれっぽい服と2人分の食事代でこの世界の通貨を殆ど使いきるつもりだ。
「ありがとうね夏雄君。これで私の目も黒くなるわ」
「元から黒いだろ」
夏雄がザッと辺りを見回すと、明らかに金を持っているようなこんな高いレストランに行き慣れていそうな人達が高そうな物を「軽く」身にまとっている。
「なんつ−か……場違い感きついな」
今、夏雄が着ている服はいつもの夏雄には全く縁が無いような値段をしているが、服に着られているのは明らかだ。
「いいじゃない。私だって開き直って成金スタイルなのよ?」
どうやら美都子に服には模造ダイヤが多めに散りばめられているらしい。
「テーマは『親の遺産を急に受け継いだので取り敢えず憧れのダイヤ、の真似物で全身を飾る女の子』よ」
「なんでそんな服着てこの世界に来てんだよ」
「みたらしあんかけモンブランが美味しいから」
「わけ分かんねぇよ」
「みたらしあんかけモンブラン?」
「いやそっちもだけど」
小綺麗で真摯そうなウェイトレスに敬われながら空いている当日席に案内される。
「ありがとー」
去っていく店員に美都子はゆっくりとお辞儀をした。
「こういうとこって、来たことあるのか?」
「夏雄君が?」
「いやなんで俺が俺のこと覚えてないんだよ。お前だよお前」
夏雄が雰囲気に圧倒されている中でニコニコとジャパニーズパフォーマンスまでやってのける美都子に、夏雄は問いかけた。
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