凍れる部屋
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しもし、と懸命に呼びかける声を遠くに聞きながら、俺は119番も諦めた。
『どうしようかなー、俺もう限界。みなちゃんに告っちゃおうかなー』
限界はこっちのセリフだ。人生の最期に目にするのがこいつの浮かれぽんちなlineトークとは…涙を流すな、頬が凍る。頭の中を今までの人生がぐるぐる回り始めた。これが噂に聞く走馬灯か。
俺は最期の賭けに出る。スマホに指を滑らせ送信すると、そのまま静かに崩れ落ちた。あぁ、なんて冷たい床だ…。
やがて、がちゃりと荒々しくノブが回る音と、複数のけたたましい悲鳴が聞こえた。
あれから数日。
俺が連絡した119番の担当者が、電話口の俺の様子から極限状態だったことを察してスマホを逆探知して駆けつけてくれたらしい。そして運よく俺を見つけてくれたみなちゃんの案内で、俺を回収してくれた。お陰で幸い数日の入院程度で俺は全快した。
結論から言うと、俺は賭けに勝った。
俺が気を失う直前、最後に送った文章は、こうだ。
『このlineトーク画面をみなちゃんに見せて告白するんだ今すぐに。占いの結果、今日を逃したら3年はチャンスが来ない。たった今!今すぐ告れ!!お前なら出来る!!』
あの浮かれぽんちはレジをほったらかしてみなちゃんの元に走ってlineを見せたらしい。最初に聞こえた悲鳴の一つは、そのときのものだったのだ。みなちゃんは納品の為、B1に居た。俺は運がいい。
今井はみなちゃんに振られた…どころか、口も利いてもらえないらしく、がっくり落ち込んでいる。当初はものすごい勢いでなじってやる予定だったが、あの憔悴っぷりを見ていたらどうでもよくなった。生きてたし。もう若くないんだから、この機に自分の恋愛スイッチの怖さを少しは思い知ってもらいたい。
「あぁ…我が想いは恋という氷のラビリンスへ…」
あ、駄目だこいつ。全く反省してない。
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