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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百四十四話 十月十五日
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ホージンガー男爵は悔しげな表情でリヒテンラーデ侯を睨んだが、それ以上の抗弁はしなかった。

「陛下、お続けください」
「うむ、理由は自由惑星同盟を名乗る反乱軍を制圧するためである」
反乱軍の制圧、その言葉にまた黒真珠の間がざわめく。

「恐れながら、発言をお許しいただけましょうか?」
「何かな、ブラウンシュバイク公」
「反乱軍を制圧するために課税するとは、戦費が足りぬという事でしょうか?」

ブラウンシュバイク公の言葉に陛下はヴァレンシュタイン元帥を見た。元帥は陛下に一礼しブラウンシュバイク公の質問に答える。

「先日のシャンタウ星域の会戦で反乱軍は大敗しました。軍ではこの機に大規模な軍事行動を起し反乱軍に城下の誓いをさせるべきだと考えています」

大規模、城下の誓い、刺激的な言葉にざわめきが広がる。
「大規模とはどの程度の兵力を動員するのだ、ヴァレンシュタイン元帥」
「実戦兵力だけで二十万隻を超える兵力になるでしょう」

二十万隻、彼方此方でその言葉が囁かれる。
「しかし、それでイゼルローン要塞を落とせるのか? 回廊内は狭く大軍を動かすのには向かぬと聞くが?」

ブラウンシュバイク公の言葉に何人かの貴族たちが頷く。ヴァレンシュタイン元帥は穏やかに微笑みながら公の質問に答えた。
「貴族の方にも軍事に詳しい方がいるのは嬉しい事です。確かにイゼルローン回廊は大軍を動かすのに向いてはいません」
「ならば、無謀な戦争などすべきではあるまい」

ブラウンシュバイク公の考えは分かる。無謀な戦争をすべきではない。戦争が無い以上戦費の心配は無い。つまり貴族に課税する必要は無い、そんなところだろう。理に適った意見だが今回は意味が無い。もう直ぐ皆驚くだろう。

「イゼルローン回廊にこだわる必要は無いでしょう」
ヴァレンシュタイン元帥の言葉に皆不思議そうな顔を見合わせる。
「何を言っているのだ卿は! イゼルローン回廊を使わずどうやって攻め込むというのだ、我等を馬鹿にしているのか?」

突っかかるような口調で元帥に問いかけたのはヒルデスハイム伯だった。そんな伯に対し、ヴァレンシュタイン元帥は微笑を浮かべながら答えた。
「馬鹿になどしておりません。フェザーン回廊経由で攻め込みます」

ヴァレンシュタイン元帥の言葉に一瞬、黒真珠の間が沈黙に包まれた。リヒテンラーデ侯、そしてエーレンベルク、シュタインホフ両元帥は微かに笑みを浮かべている。そして陛下は黒真珠の間を面白そうに見ていた。

「馬鹿な、フェザーン回廊を使うなど、卿は何を言っているのだ」
「フェザーンに攻め込むなど、中立を犯す気か、何を考えている」
「そうだ、その通りだ」

ヴァレンシュタイン元帥の言葉にヒルデスハイム伯、ホージンガー男爵が非難する。ど
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