第十二話 数字
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イヤな思いをせずに済む。
しかし、厄介なことにこのゲームには監獄というシステムがあり、PKが公になれば、監獄行き。
最悪、PKKの可能性だって十二分にありえる。
そうなってしまえば彼の計画は終わりだ。
そのために彼は、公になることを潔癖症の如く嫌う。
全てを助けるために、自分が犠牲になり、悪になり、助けるべき人を斬る。
全ては、真っ直ぐすぎるが故の、たった一つの、救済の願いのために。
本日もまた、とある狩場に、彼はやってきた。
狩場にいる人数は五人。
その全員が、今回は男性だった。
それを見て、彼は安心した。
必要のためとはいえ、女性をPKするのは気が引けるからだ。
無論、彼は引けたところで、問答無用でPKするのだが。
彼は素早く、獲物を手に構える。
構えた武器は大剣。
『メトゥラシエン』という名の青白く光る、彫刻品のような美しい大剣だ。
スキルスロットに一度だけ目をやり、特に変更しないまま、彼は男性達に向かって歩き出す。
「あん? なんだ、アイツ」
その中の、一人が彼に気づく。
そんな気づいた男性に。
彼は、一度だけ、丁寧にお辞儀する。
「こんばんは。 お取り込み中、大変申し訳ありません」
そんな紳士的な態度に、男性はお、おうと動揺をしながらも、彼の方を向く。
男性の視界には、大剣を構えた、オレンジポインターの姿。
しかし、その態度は非常に紳士的。
そのわけのわからない状況に、一度、男性は硬直した後。
「……お前、PKか?」
そんなことを、おそるおそる口にした。
さて、突然だが、ここで男性が逃げたり、仲間を呼ばずにそんなことを口にしたのには理由がある。
まず相手の武器が大剣だったこと。
男性の武器は槍で、リーチでは勝っている。
さらに攻撃速度も槍の方が速く、もしPKであっても、先手を取られることはない。
そして、彼の防具である。
見たところ戦闘向きではない。 兜も鎧も、小手すらつけていない。
シャツの上にチョッキをつけた、本当にただの一般的な服のその姿。
男性の目から見てもわかる、防御力の無さ。 所謂、紙防具。
そんな相手がPKだったとしても、勝てる自信があった。
あちらはこちらに何撃入れなければ勝てないのに対して。
こちらは、2,3発入れれば相手は落ちる。
相手をPKKすれば、街で自慢も出来る。
どう考えたところで、男性にとってはメリットしかないのだ。
だからこそ、男性は逃げない。
彼を前にして、男性は平然を装い、冷静を意地し、相手の出方を見ていた。
そして、次の瞬間。
彼は、ニコリと微笑を浮かべたかと思うと。
「はい。 通りすがりのPKです」
それだけを口にして、大剣を持ち上げる
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