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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
第四七話 勇気の誓い
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いい加減―――腹を括るべきだろう。

「唯依、渡したいモノがあるんだ。」
「?何ですか」

 そう言って徐に立ち上がると荷物を漁り目的のモノを取り出す。

「本当は手術が終わってから渡そうと思ってたんだが……今渡したくなった。」
「あ……指輪。」

 その左掌の上に載った箱に収められたモノを目にした瞬間、唯依が息が詰まったように固まった。
 口元に手を当て自分と指輪を交互に見やるばかり。そんな彼女を(はた)に器用に片腕で指輪をつまむ。

「受け取ってくれるか?」
「………はい。」

 驚きのあまり少し間の抜けた様子で左手を差し出す唯依、そんな彼女の薬指に指輪を通す。

「すごい、指輪なのに模様がある……何時の間にこんなものを……」
「以前、(おれ)が外出したことがあっただろ。その時に引き取りに行ってたんだ。」

 嵌められた指輪を外から差し込む街灯と月の灯りに照らす唯依。その指輪には不思議なことに木目のような模様が浮かんでいた。
 その指輪は文字通り、木目金という複数種類の金属が積み重なりつつも溶け合って出来る鋳塊を利用したものだ。
 刀の波紋の様に同じような模様は作れても同じ模様は決して作れない唯一無二の指輪だった。


「生きるか死ぬかも分からない内は渡さないと決めてたんだがな……お前に勇気を貰ったからな。腹を決めたよ。」

 つーと糸を引くように頬に軌跡を描きながら涙滴が流れた。

「あれ……違うんです。可笑しいな嬉しいのに……凄く嬉しいのに……」

 降り出した雨の様にぽろぽろと止め止め無く零れる涙を拭う唯依。

「分かっている。大丈夫、分かっているさ。」

 唯依の頭を軽くなでる。ただ一重にありったけの愛おしさを込めて―――

「忠亮さん……きっと私、いい奥さんになります。だから待っていてください。」
「待ってもらうのは(おれ)のほうだよ。―――待っていてくれ、(おれ)は必ず帰ってくる。」

 涙ながら言う唯依に告げる。必ず生きて戻ると―――その意志は決めていた、他に道はないのだ。
 それが自分が決めた事なのだが、時折無性に不安になる。その弱さこそ(おれ)が消し去りたいものだというのに、何をやってもどんな修練を積んでも一向に消し去る事が出来ない。

 一時とはいえ別れてしまう二人、別れなければならない。これが今生の別れかもしれない。
 その不安を超えて、共にある未来にまた会おう。そして一緒に歩いて行こうという約束。

 約束、それは気休めに過ぎないのかもしれない。
 この指輪を与えて自分が死んでしまったら、唯依はその歩みを止めてしまうかもしれない。(おれ)は守ってやれない……生きていたところで守れない確率のほうが高いがそれがやり遂げた結果です
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